米津、ボカロ人気の背景をなす…「BUMP OF CHICKEN」その本当の魅力

彼らが〈失敗〉した時に見えるもの
伏見 瞬 プロフィール

〈斜め〉の〈色気〉

バンプの音楽を考える上でなにより欠かせない要素は、ギターボーカルの藤原基央の声だろう。歌声に含まれるザラつきと倍音の豊かさ。低音から高音へ駆け上がる時の、かすれ声の艶やかさ。

彼の声は強さを印象づけるが、決して太くはない。実際、藤原の身体は細く見える。特に二の腕は明らかに細い。にもかかわらず、彼の喉にはタフネスがあり、負担の大きいハスキーな歌声を維持できる。たくましい筋肉のイメージとは別の、貧弱にも見えかねない身体に宿された強さ。それは、新たな〈色気〉の発明ではなかったか。 

そう、バンプには色気がある。しかも、真正面から性の匂いを濃厚に漂わせるものではなく、〈斜め〉の角度で伝わってくる〈色気〉だ。

たとえば、藤原基央には左足を前に出した姿勢で歌う癖がある。ギターを左前方にかたむけて、マイクに顔を向ける。前に向けて放たれる声は、藤原の身体の中で左寄りに、斜めに響いている。彼の歌唱法自体に〈斜め〉の作用がある*2。ストレートではない、鋭角に響く色気。声の出だし部分に真正面から力を込めるのではなく、声が途切れる直前にブレスでわずかにアクセントをつける藤原の歌唱法も、その色気の発露に加担している。

(画面中央、左足が前に出る藤原)

 

こうした鋭角的特質は、藤原基央の顔が有するいくつかの特徴と呼応している。たとえば、藤原の切れ長の、一重の目の鋭さ。あるいは常に長めにキープされている、前髪から横髪への斜めのライン。彼の顔にも鋭角的特徴があり、それが声の特質と重なるが故に、他に類をみない個性と魅力が発揮されることとなる。

MVとコード進行の〈斜め〉

ミュージックヴィデオ(MV)においても、彼らの〈斜め〉性は見て取れる。MVで、バンプの四人の演奏は斜めから撮影されている場面が非常に多い。まっすぐに映されるのはまれで、特に藤原が視線をカメラに返すことはほとんどない。

バンプの知名度を飛躍的に高めた初期のヒット曲『天体観測』のヴィデオを観てみよう。演奏シーンと、メンバー四人の面影を重ねた少年達が天体観測の計画を練って実行するストーリーで構成された、4分31秒の映像。

全150カット中のうち84カットが演奏シーンにあてられているのだが、斜め横、斜め上、斜め下からの構図はあっても、メンバーを画面の真ん中でまっすぐ捉えたカットは皆無だ。

『天体観測』MVより引用