反民主主義・中国へのABC-J包囲網、菅首相は静かに本気を示した

価値感共有という学術会議問題の意味
大原 浩 プロフィール

柔よく剛を制す

「学術会議問題」においては、更に日本伝統の秘儀「柔よく剛を制する」が活用された。

弱々しく見えるしなやかなものが、猛々しい固いものを打ち負かすということだ。

相手が攻撃する力を逆手に取って、その相手の力と自分の力を合わせた力を使ってしなやかに反撃(今はやりの言葉で言えば「倍返し」)すると言うのが柔道の極意であり、小柄な少年が大男を倒すことができる理由でもある。

菅首相は「6名の任命拒否」というきっかけを提供したに過ぎない。その餌にまんまと飛びついたのがオールドメディアたちであり、自らの手で「日本学術会議の闇」を白日の下にさらしたに等しい。

オールドメディアはともかく、ネット上の言論では「(戦後アカデミズムの)『共産主義支配』による利権」「(仮想)敵国との親密な関係」「自国の安全保障に関する妨害」に対する怒りの声があふれている。

もし、政府が正攻法で「日本学術会議」の問題を追求しても(オールドメディが無視して)国民が関心を持たなかったはずだから、オールドメディアなどの力を使って、しなやかに「倍返し」するという戦略が見事に決まったと言える。

ところで、ある世代以上の読者はゆーとぴあというコンビを覚えているかもしれない。「ゴムぱっちん芸」で一世を風靡した。

ゴムひもの端を加えた芸人のあい方がもう一方の端を持って遠くまで歩く。そして手を離すという芸だが、オールドメディアたちは、しなやかなゴムを猛々しく攻撃し、その伸びきったゴムが自らの顔面を直撃したと言えよう。

海外でも「反民主主義」の代表格である共産主義との戦いが激しさを増している。共産主義国家だけではなく、国内の「共産主義」(反民主主義)との戦いもし烈だ。

英国のジョンソン首相は、9月21の記事「メルケル独裁16年間のつけ、中国がこけたらドイツもこけるのか?」で述べたドイツをはじめとする自国を取り囲むEU諸国と対峙しなければならないだけではない。それらの国々から英国へも「共産主義」が国内に流入しており、それらとも戦わなければならないのだ。

また、現在、大統領選挙真っ最中のトランプ氏も国内の「共産主義勢力」からの攻撃にさらされている。

グレタ・トゥーンペリさんが、対立候補であるバイデン氏への支持を明確にしたが、彼女が「先進国の二酸化炭素排出を問題にしても、世界最大の排出国である共産主義中国を非難しない」ことから考えれば、バイデン氏がどのよう勢力の影響下にあるかは容易に想像できる。

10月10日の記事「気をつけろ、自然界も人の社会も放っておけば全体主義を志向する」で述べたように、民主主義は歴史的に見れば生まれたての赤ん坊であり、少しでも気を抜けば全体主義に抹殺されてしまう。

 

ジョンソン氏もトランプ氏も「反民主主義」との戦いでは全く気が抜けないから、国内の反民主主義勢力に見事「倍返し」を決めた菅首相は、安倍首相以上に世界の民主国家からの信頼を得て頼りにされるかもしれない。