「脱ハンコ」は「脱中央集権」で国民の信頼を得なければ成功しない

いまだに響く住基ネットの失敗
野口 悠紀雄 プロフィール

国民は何を心配したか?

どんなメリットがあるのかが、はっきりしない。それなのに、なぜ政府は熱心に導入しようとするのか? この裏には何かあるのではないか? 多くの国民が、このように考えた。

とくに問題とされたのは、国民監視やプライバシー侵害、情報流出の危険性だ。そして、「監視・徴税強化社会はNO」とのスローガンの下で、各地で違憲訴訟などの住基ネット訴訟が相次いだ。

これに対しては、2008年に最高裁が住基ネット合憲の判決を下した。その理由の要旨は、住基ネットが扱う情報は「秘匿性の高い情報とはいえない」、住基ネットの仕組みは「外部からの不正アクセスで情報が容易に漏えいする具体的危険はない」とのことだ。

ところで、「メリットがはっきりしないのに導入に熱心」というのは、マイナンバーカードでも同じだ。これについては、10月11日の「『脱ハンコ』、面倒になっては本末転倒〜使えるサービスほとんどなし」述べた。

なぜ導入したいのか? 真の目的は何なのか? 課税強化か? 国民監視か? それほどでなくても、「ITベンダーと利権確保か? 天下り先確保が本当の目的か?」等々の疑念が出てくる。

政府は、これらの1つ1つに、誠実に答える必要がある。マイナンバーカードのような仕組みは、国民の国に対する信頼がなければ、成功しない。

 

住基ネットの場合、世論の反対が強く、政府が望んだ民間情報とのひも付けができなかった。そのため、使い途がなく、それが上記のような疑念を増幅させるという悪循環に陥ったのだ。