「脱ハンコ」は「脱中央集権」で国民の信頼を得なければ成功しない

いまだに響く住基ネットの失敗
野口 悠紀雄 プロフィール

ほとんど使い途がなかったから使われなかった

国民の側からみて、住基カードで何が便利になったのだろうか?

総務省の説明を読むと、まず、「パスポート申請に住民票の写しの提出が不要となる」としてある。

しかし、それでは窓口にいかないで済むのかといえば、依然として「戸籍謄本・抄本」などの書類が必要とされた。つまり、市町村役場やパスポートセンターの窓口に足を運ぶ必要があったのだ。

あるいは、「従来は、住んでいる市町村でしか交付を受けられなかった住民票の写しを、住基カードの提示で、全国どこの市町村でも交付を受けることができるようになった」とされた。

また、「引っ越しの場合、従来は、それまで住んでいた市町村で転出届の手続をし、転出証明書の交付を受けた上で、引っ越し先の市町村で転入届を行う必要があった。それが、住基カードの交付を受けていると、郵送またはインターネットにより住んでいる市町村に提出すれば、転出証明書がなくても引っ越し先の市町村において転入届を行うことができるようになった」とされていた。

確かに、従来より手続きは少なくなるだろう。しかし、パスポート申請や住民票の写し取得は、頻繁に利用するサービスではない。引っ越しも、一生に数回というのが普通だ。

 

こうしたことのために住基カードを持つ必要があるのかどうか、疑問だ。少なくとも、生活に重大な支障が出るようなことはない。また、膨大なコストをかけてシステムを構築するメリットがあるかどうか、疑問だ。

「自宅でいつでもPCとインターネットを通じて申請や届出をすることが可能となった」との説明もあったのだが、こうした感激的な効果はなかったのだ。