「シャネル5番」にも使われる、たった4種類しかない動物由来の香料

人と香りの5000年の歴史
平山 令明 プロフィール

ビーバーから取れるの海狸香

ビーバーは雌雄ともに、肛門近くに香囊を持っていて、そこに強い臭気(香りというより)を持つ黄褐色のクリーム状の分泌物があります。

これを乾燥して粉末にした物がビーバー由来の香りでカストリウム(海狸香、かいりこう)と呼ばれます。ビーバーはこの匂いでマーキングして、縄張りを示すために使います。

ビーバー Photo by webmink/iStock

この場合も、やはりこの粉末をエチルアルコールに溶解してチンキとして使うか、有機溶媒で抽出して樹脂状(レジノイド)にした後、エチルアルコールで抽出してアブソリュートとして使います。

ヨーロッパなどでは昔は、頭痛、発熱、ヒステリーなどの治療薬としても使われましたが、その薬効は確認されていません。香りは、基本的に皮革のような香りですが、産地によって樹木のような香りがする場合もあるようです。

しかし、これをアルコールで薄めると、一変して、ジャコウのようなフルーティな香りになります。

また、カストリウムはバニラのような香りを持ち、ラズベリーやストロベリーの香りを引き立ててくれますので、なんと昔はお菓子などの食品にも添加されていました。もちろん、香水としても使われてきました(例えばシャネル(Chanel)のアンテウス(Antaeus))。

 

ビーバーも乱獲され絶滅が一時危惧されました。香囊だけのためにこの可愛い動物を殺すという行為は、香水という平和的で人の心を和ませる商品のイメージとはあまりにかけ離れています。幸い今ではほとんどのカストリウムは、純粋に化学合成されたもので代替されています。