5Gだけじゃない!iPhone 12に託されたアップルの新戦略

4機種同時投入に込められた深い意味
西田 宗千佳 プロフィール

その理由は、アップルが「iPhone」という強力なブランドを抱えているからだ。そのことを背景にして、ソフトからハードまで、多くの部分を自社設計していることが背景にある。

どんな製品であれ、使用する各パーツは、量産すればするほど生産コストが下がる。これに反比例して、設計にかけられるコストを上げることができる。

すなわち、できるだけ多くの機種で同じ設計のパーツを流用することで、コストパフォーマンスが上げやすくなり、高品質化にもつなげることが可能になるのだ。

アップルは、過去10年にわたって、iPhoneなどに搭載するプロセッサーを自社設計し、一括して生産委託してきた。通信に関する設計も、基本的には自社内でおこなうし、OSなどのソフトも自社開発だ。

そのようにして一気通貫的に大量生産したハードやソフトを、「その年から数年間、販売する機種」に同時投下する。受注する側の各部品メーカーに対しても、「大量導入」を前提とした交渉をおこなうため、特別なパーツを製造してもらいやすいというメリットもある。そのぶん、受注交渉は苛烈だと聞くが……。

今回も、全4機種のiPhone 12シリーズには、すべて「A14 Bionic」というアップル製の同じプロセッサーを用いており、5G関連の通信機能も共通のものになっている。

【写真】「A14 Bionic」アップル製プロセッサーiPhone 12シリーズには「A14 Bionic」アップル製プロセッサーが用いられている photo by gettyimages

その結果、なにが起こるか。

破格のメリット

劇的なコストパフォーマンスの向上だ。

iPhone 12は、価格が前機種とほとんど変わっていない。5G対応になり、性能がアップし、デザインも大幅にリニューアルされたにもかかわらず、「価格は据え置き」なのだから、ユーザーからすればかなりのお買い得感だ。

もちろん、「これ以上高額なものになったら、スマホを買ってもらえない」ことを危惧したアップルの価格戦略もあるだろう。しかし、その戦略を実現できる裏付けとして、多数のモデルで部品や設計を共通化することで全体最適を図る、という手法が採られているのは間違いない。

 

「全機種5G対応」がもつ意味

ここで視点を変えてみよう。

──アップルはなぜ、最新のiPhoneで一気に「全機種5G対応」を打ち出したのか?