2019年FRaU12月号「世界ときめく日本ラグジュアリー」特集号では「入浴体験ほど、ラグジュアリーなものはない」と、究極の湯の道「湯道」について語ってくださった小山薫堂さん。「偶然を出来事にできると世界はいきなり魅力的になる」という日常での考え方のヒントから、「愛され力のある商品こそがほんもの」「文化はモノを通さないと伝わらない」などラグジュアリーの本質、「日本ならではの慮(おもんぱか)る力」など、日本ならではのラグジュアリーについても、たくさんの心に響く言葉をいただきました。引き続きJapan’s Authentic Luxury(略称JAXURY)のテーマで、今回は、薫堂さんが近頃気になるラグジュアリーなことについて「愛着のあるもの」を通して語っていただきました。

そもそも『JAXURY』とは?
FRaUが発信する、世界に誇れる日本の美しさ「JAXURY」を徹底解説!
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愛着=愛され力のあるものがラグジュアリー

最近、僕は愛着という言葉を素晴らしいと感じることが多くなりました。
“愛を着せる”という日本語ってすごいと思いませんか?愛を着せかけたくなるもの、そういうものこそがラグジュアリーなんじゃないかなと。それは、逆に言えば愛される力のあるもの。愛の衣を着せれば着せるほど愛がコーティングされて、どんどん輝きを増していく。だから時間にも耐えうるし、経年優化でまた別の価値も生まれていくのだと思います。

ものの価値は数字では計れない「もの自身が持つ力」

ものの価値を決める評価軸は、広さや価格などの数字であることが多いけれども、本当はそういった数字では決してはかれない愛着度合いみたいな、そのものが持っている力によると思うのです。だから、同じものでも人によってその捉え方が異なることもあるはずです。例えば、父親から譲られた時計を大切に使っている人にとって、その時計はラグジュアリーだけれども、価格を評価軸とする人にとってそういう時計はラグジュアリーではないでしょう。それは、ワインの評価軸にも言えることです。

ワインと人の「巡り合い」を創る仕事、ソムリエ

「ソムリエほどずるい職業はないよ」と、よくソムリエに話すのですが、何故かといえば……ワインを飲んだ人が「美味しい!」と思う瞬間に立ち会える、いわばいちばん美味しいところを持っていく職業だから(笑)。でも、どの人に、どのタイミングで、どのワインを勧めるのがベストかということを判断するのがソムリエの力で、言い換えればワインと人を巡り合わせる力がある職業なのです。ワインの立場になって考えてみると、それがいかに大事なことかがわかりますよね。

ワインの価値の創造の割合としては生産者と同じくらいの責任を担っていると思います。だから、ずるいけどとても尊い職業。ものを作るわけではないけれど、消費者が感じる価値を大きく左右する職業ってソムリエのほかには思い浮かびません。ソムリエという職業は、ワイン側の立場に立って、巡り合いや出会いというものを創造していくという点で、非常にクリエイティブだと思います。そして、愛がある。ラグジュアリーとは、そのもの自体に魂を感じられるくらい、人が愛を注ぐことでもあると思うのです。