ネギ1本1万円で売る男が、ホウレンソウを育ててたどり着いた“闘い方”

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(16)
清水 寅 プロフィール

東北だからできること

ホウレンソウを甘くするコツは、栽培方法にもあります。ネギと一緒で、ゆっくりゆっくり育てることです。畑に長く植わっていれば、それだけ光合成の量が増えるので、甘みもうまみも増していきます。さらにいえば、シュウ酸も硝酸も抜けていく。

暖かいと、植物はグングン育ちます。寒いと、あんまり育たない。だから、じっくり育てるために、種まきのタイミングを遅らせています。

※画像はイメージです。Photo by iStock

天童市だと、だいたい8月末、遅くても9月10日までには種まきしますが、うちは9月15日ぐらいまで待つ。「たった5日か」と思ったかもしれませんが、秋の種まきが5日違うと、出荷時期は2週間もうしろへズレます。それぐらい違う。

山形県では10月末からガーンと気温が急落し、11月には雪が降ることもある。最後のほうは、あえて雪に当てる。より甘みが増すからです。徐々に寒さに慣らしているから、雪で枯れることはありません。

 

雪が積もる時期までには収穫します。ホウレンソウの上にビニールをかけて、雪のなかで育ててみたこともあるのですが、収穫に難があった。まず雪をよけるだけで重労働です。しかも、湿った土を踏みまくるので、翌年、土が乾かず、硬くなってしまう。そんな理由で、雪の中で育てることは断念しました。

こうした作り方は、寒い土地だからできることです。じっくり育てるのも、雪に当てるのも、暖かい土地ではできない。東北ならではのホウレンソウ栽培といえます。

関東でホウレンソウ農家をやっている友人に聞くと、「味なんか求めている余裕はない。とにかく欠品させずに毎日出荷することが命だ」と言います。暖かいと作物はすぐに育つ。それを利用して、彼は畑を年に10回転もさせている。そのおかげで年商3億円と、ものすごい規模の農家に育ちました。

雪の積もる東北で年中作るのは無理ですが、東北でしかできない農業もあるということです。キスよりあまいほうれん草は、絶対に関東では作れない。

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