『ねぎびとカンパニー』恋するカボチャ

ネギ1本1万円で売る男が、きゅうりやカボチャじゃなく“ネギ”を選んだ理由

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(15)
「1本1万円のネギが売れている」そう聞くと驚く人も多いのでは?
『ねぎびとカンパニー』社長・清水寅氏は脱サラ後に農業を始めた中途参入組。しかし今では『ねぎびとカンパニー』のネギは1本1万円の価値が付くほどに…。
注目書籍『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』から毎日連載企画!
第15回では、ネギで売り上げが立たない期間、寅氏が奮闘したものについて、お届けします。>>今までの連載はこちら!

強気の交渉が裏目に

3年目になると、スーパーとの付き合いも一気に増えました。そこで、バイヤーにこう言ったのです。

「いま何に困ってます? 俺、作りますよ」

交渉ごとの基本は、自分が困っていることを助けてもらうより、相手が困っていることを先に解決すること。どんなにお金に不自由していても、「何でも作りますから、助けると思って仕事をください」と泣きつくんじゃあ、足元を見られて買い叩かれる。だから、ちょっと生意気な態度で、スーパーの悩みを「解決してあげた」わけです。

カリフラワー ※画像はイメージです。Photo by iStock
 

すると、今年はカリフラワーが品薄で困っているのだと言います。「じゃあ、俺が作りますよ」「カリフラワーなんか作れるんですか?」「大丈夫。余裕です。2万個でも作りますよ!」

もちろん、作った経験などありません。でも、頭の中には「2万個作って1個198円で卸したら、400万円くらいの売上にはなるな」という計算しかなかった。資金面でかなり追い込まれていたのです。

「これで俺たち、7月はカップラーメン生活から脱出できるぞお!」なんて宣言して、従業員と盛り上がりました。

やってみると、2万個の苗を植えるのは、けっこうな作業でした。でも、これが突破口だという共通理解があるので、みんな一丸となって植えた。小松菜の失敗に学び、消毒もきちんとやった。苗はどんどん成長しました。

ところがです。いつまでたっても、蕾(食べる部分です)を葉っぱが巻いてこない。栽培方法を手取り足取り教えてくれた種苗会社から「そろそろ収穫時期です」と電話があったのですが、結局、最後まで巻かないままでした。あとからわかったのは、何十年に一度という雨の降らない年で、その影響が出ていたのです。

蕾を葉っぱが巻くから、カリフラワーは白くなる。巻かずに日光に当たると、黄色いカリフラワーになってしまいます。まあ、違いは色だけなので、「できました。黄色いカリフラワーだからビタミンCたっぷりです」なんて、写真入りのメールをバイヤーに送りました。ドキドキしながら待っていると「いいですね!」と返ってきて、ひと安心です。