法定後見は、認知症の症状の進行度合いによって、3つの類型にわけられる。一番重いのが「後見」で既述の通り「(常に)判断能力がまったくない」人が対象で、千穂さんを担当した医師は「後見類型が相当」との診断書を提出したものとみられる。
次に重いのが「保佐」、最も軽いのが「補助」で、補助類型の場合は本人の判断能力が十分あるため、本人が「成年後見制度を使いたくない。嫌だ」と拒否したら、家裁は利用を強制できない。
だが医師が「後見」相当と診断し、それに基づき、家裁が成年後見人をつけた場合でも、その判断が正しいとは限らない。
実際、17年1月には、名古屋高裁が、津家裁と医師が「後見相当」として成年後見人を付けた桑名市在住の女性の判断能力を認め、「常に判断能力がない」とした家裁の判断を退ける判決を下している。
この女性は、桑名市役所(市長)の申し立てで成年後見人(弁護士)をつけられて施設に放り込まれ、「家に帰してほしい。家族と会いたい」と何度も訴えたが、施設と後見人に無視され、家族とも、長く面会できなかった。
名古屋高裁判決を受けて行われた再・精神鑑定の結果、本人は「補助」相当と診断され、本人は成年後見制度の利用を拒否。ようやく「悪夢のような成年後見制度から逃れることができた」(家族の話)。