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# 成年後見人

「家に帰りたい」…勝手に家財と店を処分された居酒屋女店主の絶望

「成年後見制度」が産んだ悲劇(2)
東京・東日暮里にあった「小料理みゆき」は、在京の阪神タイガースファンが集う「聖地」。過去には元監督の吉田義男氏、和田豊氏なども訪れたことがあるという。この店を営んでいた金沢千穂さん(78歳・仮名)は2年前、突然店を閉めざるを得ない状況に追い込まれた。
理由は、自活できる程度に健康だった千穂さんに、十分な説明がないまま成年後見人がつけられ、私財を勝手に処分されたことにあった。独身で頼れる人も少ない高齢者の経済的・精神的な自由を奪い、その後のケアもマトモにないような国家制度など存在していいのかーー。
成年後見人制度によって引き起こされた、あってはならない悲劇と問題点を詳報する。(前回記事はこちら:
「店を勝手に閉められた」阪神ファンの聖地「小料理みゆき」店主の怒り

トラブルの多い「法定後見」

法定後見は、認知症の症状の進行度合いによって、3つの類型にわけられる。一番重いのが「後見」で既述の通り「(常に)判断能力がまったくない」人が対象で、千穂さんを担当した医師は「後見類型が相当」との診断書を提出したものとみられる。

次に重いのが「保佐」、最も軽いのが「補助」で、補助類型の場合は本人の判断能力が十分あるため、本人が「成年後見制度を使いたくない。嫌だ」と拒否したら、家裁は利用を強制できない。

店内は金本の連続フル出場世界記録の記念ボールなど、阪神グッズに溢れていた
 

だが医師が「後見」相当と診断し、それに基づき、家裁が成年後見人をつけた場合でも、その判断が正しいとは限らない。

実際、17年1月には、名古屋高裁が、津家裁と医師が「後見相当」として成年後見人を付けた桑名市在住の女性の判断能力を認め、「常に判断能力がない」とした家裁の判断を退ける判決を下している。

この女性は、桑名市役所(市長)の申し立てで成年後見人(弁護士)をつけられて施設に放り込まれ、「家に帰してほしい。家族と会いたい」と何度も訴えたが、施設と後見人に無視され、家族とも、長く面会できなかった。

名古屋高裁判決を受けて行われた再・精神鑑定の結果、本人は「補助」相当と診断され、本人は成年後見制度の利用を拒否。ようやく「悪夢のような成年後見制度から逃れることができた」(家族の話)。