初代葱師・清水寅氏

ミシュランガイド片手にネギを売り込み【ネギ1本1万円で売る男の過去】

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(11)
「1本1万円のネギが売れている」そう聞くと驚く人も多いのでは?
『ねぎびとカンパニー』社長・清水寅氏は脱サラ後に農業を始めた中途参入組。しかし今では『ねぎびとカンパニー』のネギは1本1万円の価値が付くほどに…。
注目書籍『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』から毎日連載企画!
第11回では、ネギのブランド価値を高めるために寅氏がとった方法をお届けします。>>今までの連載はこちら!

ミシュランガイドを頼りに売り込み

実は、真の葱発売とモナリザ発表の間に、もうひとつブランド価値を高める方策をたてました。高級レストランへの納入です。

蕎麦屋には初年度から納入したものの、レストランに卸すことには、僕は否定的でした。多くの人からすすめられましたが、反対した。失礼ながら「ネギの味をわかってない」と思い込んでいたからです。

※画像はイメージです Photo by iStock

焼き肉のチェーンに行っても、肉の等級や産地にはうるさいのに、野菜にまったくこだわっていない。あれだけネギを使う蕎麦屋だって、見ているのは値段と鮮度だけ。そんな印象があったので、「高級レストランもそうに違いない」と思っていた。

コストの問題もありました。レストランで使うといっても、一日5本、10本がせいぜいです。蕎麦屋なら一日1ケースは仕入れてくれますから、ロットが違う。しかも、東京のレストランに卸すとしたら送料がバカにならない。ネギ代1500円、送料1500円では、まったくペイしません。

それでも決意したのは、2本298円の実現に役立つブランド価値を高めることもさることながら、ネギの良さを理解してもらうため、ネギのおいしさ、違いを知ってもらいたいと考えたからです。

とはいえ、東京の高級レストランに伝手(つて)なんてありません。ネギの出荷が終わった2017年2月、クルマに山ほどサンプルを積み込んで、ミシュランガイドだけを頼りに東京へ営業に出ました。

 

超有名店を10軒ぐらい回りましたが、当然ながら、邪険にされたりもしました。シェフまでいきつけば話を聞いてくれるのですが、見習いの若手が出てきて、ドアをバーンと閉められたりすることもありました。飛び込み営業だから、半端ないアウェイ感は仕方がありません。それでもメゲずに回っていると、いいことも起こります。