20年据え置きのネギの値段を変えた! ネギ1本1万円で売る男の戦略

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(9)
清水 寅 プロフィール

プレゼントにできるネギ

ただし、そこから先は長かった。2本198円を実現したあと、2本298円で売ってくれるスーパーが登場するまで3~4年はかかりました。東京のすべてのスーパーで2本298円になるには、さらに時間が必要だった。ものすごく苦労した。

スーパーに何度かけあっても、例外なく却下されました。「ネギはそういう野菜じゃない。庶民的な値段でないと無理なんだ」と。

当時、さまざまな業界の人と会うたび、「ネギの値段を上げるにはどうしたらいいと思いますか?」と質問しまくっていた。誰も答えをもっていないとわかってはいるものの、わらにもすがる思いだったのです。

寅ちゃんネギ

やはりブランド化するしかない。「寅ちゃんねぎだから、多少高くても買うか」と思ってもらうしかないのだ――。そういう結論に達しました。そのためには味と見た目が重要です。見ただけで「このネギはよそのと違う」と思ってもらえて、実際に食べても「おいしい!」と感じてもらえるネギを作る必要がある。

実は2年目から、有機肥料へのチャレンジを始めていました。初年度は化成肥料100%でしたが、2年目に有機肥料が25%になり、3年目に50%になって、4年目には完全に有機肥料だけで作るようになった。

書籍では詳しく説明していますが、有機肥料で育てると病気が減る。ネギが健康に育つのです。そうした理由で始めたのですが、味もよくなることに気づいた。化成肥料よりおいしくなるのです。

真の葱やモナリザは夏扇(なつおうぎ)パワーという品種ですが、実は農家の間では「おいしくない」と悪評が高いのです。だから、農家から「なんで、こんなにおいしく作れるんですか?」と、しょっちゅう問い合わせがくる。

じつは、化成肥料を使うと、土が硬くなります。当然、ネギも硬くなる。うちは有機肥料しか使わないし、土をフカフカのまま保つ工夫もしているので、柔らかく作れるわけです。しかも糖度が非常に高い。

早くも4年目にはバイヤーの方から「このネギおいしいから、お歳暮で送ってもらえない?」と頼まれるようになりました。そういう人が徐々に増えた。

プロが褒めてくれるのだから、味は確実に上がっているのだと喜びました。それと同時に驚きもした。野菜をお歳暮にするなんて、聞いたことがなかったからです。

「うちのネギって、贈り物になるんだあ……」

プレゼントにできるネギ――。「これだっ!」と思いました。

 
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