20年据え置きのネギの値段を変えた! ネギ1本1万円で売る男の戦略

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(9)
清水 寅 プロフィール

2L理論

数字で考えれば、いろんなところに利益を増やすヒントが見つかります。たとえば、ネギのサイズです。

農作物には規格があります。ネギでいうと、長さは60センチと決まっています。規格は県によっても違いますが、山形県の場合、太さは、Mサイズが1.3~1.6センチ未満、Lサイズが1.6~2.0センチ未満、2Lサイズが2.0~2.6センチ未満。

スーパーや飲食店に直接出す場合はそこまでうるさく言われませんが、農協に出す場合は、規格にきっちりそろえないとハネられてしまう。

ネギ畑

規格については、初年度から疑問で仕方がありませんでした。1ケースに、Mなら55本、Lなら45本、2Lなら30本入ります。ところが当時、どの太さでも、1ケースの値段がほとんど変わらなかった。細かい数字は忘れましたが、Mが1ケース1300円、Lと2Lが1ケース1500円ぐらいだったと思います。

Lの1ケースには、2Lの1.5倍の本数が入っています。当然、育てる手間も、皮をむく手間も、箱詰めする手間も1.5倍です。資材費も燃料費も人件費も1.5倍かかっているのに、値段は同じ。これはおかしいじゃないかと。

計算してみました。仮に5町歩の畑で一日300ケースの出荷としたら、Lを出すのと2Lを出すのでは、30年間で12億円も利益の差が生まれると出た。2Lを作るほうが圧倒的に経費が抑えられる。そこで決意したのです。

「俺は2Lを作る!」

MサイズやLサイズだけを作る農家には絶対ならないと決めました。だから、新規就農2年目でネギ栽培面積日本一を達成したあとは、「いかに太いネギを作るか」「いかにおいしいネギを作るか」に関心が移っていきます。

太いネギを作る技術はどんどん上がっていきました。現在、うちが出荷するネギの7割は2Lサイズです。いまも地方のスーパー向けにLサイズを作り出荷していますが、全体の2割にしかなりません。

 

さきほどの2本セットのときは、Lサイズで計算して、相手を説得しました。でも、そのスーパーだけでなく、どこのスーパーでも2本198円が受け入れられたのは、うちが2Lのネギをメインにすえたことと無関係ではないと思います。これまでより明らかに立派なネギなのだから、消費者は割高に感じなかったのです。