初代葱師・清水寅氏

20年据え置きのネギの値段を変えた! ネギ1本1万円で売る男の戦略

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(9)
「1本1万円のネギが売れている」そう聞くと驚く人も多いのでは?
『ねぎびとカンパニー』社長・清水寅氏は脱サラ後に農業を始めた中途参入組。しかし今では『ねぎびとカンパニー』のネギは1本1万円の価値が付くほどに…。
注目書籍『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』から毎日連載企画!
第9回では、農協との取引をゼロにした寅氏が次にネギの単価を上げるためにしたことをお届けします。>>今までの連載はこちら!

2本セットにすりゃいいじゃん

ネギの値段はこの20年、平均するとほとんど変わっていません。肥料代も農薬代も燃料費も人件費も、みんな1.5倍にはなっているのに、小売価格だけが変わらない。本来なら、ネギの小売価格も20年前の1.5倍でおかしくないのです。これでは農家はやっていけません。

出荷前のネギ

うちも初めて山形県のスーパーに出したときは3本98円でした。翌年には3本158円になり、その翌年には3本198円になった。

さらに単価を上げる大きなきっかけになったのは、2本売りにしたことでした。3本198円を2本198円にできたときに、大きなステップを踏み出すことができた。

昔から続いてきた3本セットは、いまや意味合いが薄れています。地方の大家族ならともかく、東京の核家族では、使いきれずに1本捨てている人も少なくない。そこで、2本セットで売ることを提案したわけです。

それまでの常識を打ち破ることは簡単ではありません。スーパー側は当然、反対しました。そこで、こう説得したのです。

Lサイズのネギなら、段ボール箱1ケースに45本入っています。これを3本ずつセットにすると、15セットできる。1セット198円で売るから、総売上は2970円です。一方、これを2本セットにした場合、23セットできます(うちではLサイズを1ケース46本入りで出していました)。1セット198円で売ると、総売上は4554円になる。

まったく同じ1ケースのネギが、何本で束ねるかで、売上は53%もアップする。「おたくにとっても得になる話なんだから、試すだけ試してみてよ」と。結果はすぐ出ました。なんの問題もなく売れた。

小売価格をいきなり1.5倍にすることはできません。3本298円では、消費者から拒絶されたでしょう。でも、値段は198円のままで2本セットにしたら、実質1.5倍の値上げでも受け入れられた。これまでより品質のいいネギだと消費者が納得してくれれば、文句が出ることはないのです。

 

スーパーの売上が5割増するわけですから、うちの卸値も少し上げてもらう。これで利益が増えました。ネギの値段が1.5倍になって、ついに原価の高騰に追いついた。2本セットに変えるだけで、20年間の遅れを一気に取り戻せたわけです。