農協に出さないとしたら、どこに出せばいいのか?
最初に目をつけたのは蕎麦屋でした。蕎麦屋はネギのヘビーユーザーで、山形県は蕎麦どころだから、たくさんお店があるのです。
初年度は農家の資格がないので、軽トラに載せて売りにいったりしていました。
朝は農作業、夜は出荷準備がありますから、僕が動けるのは昼間しかない。ランチタイムにネギの売り込みをするわけで、行く先々で怒られました。でも、初年度で50軒ぐらいは契約してくれた。
蕎麦屋にとってもメリットは大きかったのです。新鮮なものが、市場を通すより安く手に入るわけですから。
うちのネギが蕎麦屋が好むタイプの品種だったという理由もあります。ネギには縦伸びする品種と、横太りする品種があって、初年度は縦伸びする品種を栽培していた。大半の農家は横太り品種を選んでいたので差別化できると思ったし、縦伸び品種のほうが成長は速いので、誰より早く売れて有利だと考えたのです。
縦伸びする品種は皮が柔らかくて、あまり辛くない。蕎麦屋では生で食べることも多いので、その点を気に入ってもらえたようです。
ただ、皮が柔らかいというのは、畑で腐りやすいことをも意味します。おいしいけれど、弱いのです。そのせいか、初年度は病気にやられまくってしまいました。だから、2年目からは横太りする品種にかえ、いまにいたります。
とはいえ、現在は皮が硬くならない育て方をしていますので、横太り品種でも、柔らかく作ることができる。だから、蕎麦屋から「前みたいに柔らかくないじゃないか」なんて文句を言われたことは一度もありません。