出口治明氏

出口治明氏が語った、中国相手だと日本人がムキになってしまう理由

歴史を学べば、現代の中国が見えてくる
『還暦からの底力――歴史・旅・人に学ぶ生き方』(講談社現代新書)がベストセラーとなっている出口治明氏が考える、「中国という国の特異さ」と、「今こそ、その歴史に学ぶべきこと」とは――。中国語版が累計150万部の大ヒットとなった「中国の歴史〈全12巻〉」(講談社刊)の学術文庫版の刊行開始を機に、「中国史の面白さ」と、特にお薦めの巻について、お話を聞きました。
講談社学術文庫「中国の歴史」全12巻
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世界の中でも特異な国・中国

――御著書の『還暦からの底力』で、人生の楽しみ方として「歴史と旅に学ぶ」ことを勧められている出口先生から見て、中国史の面白さとはどのあたりにあるとお考えでしょうか。

出口 中国は世界でも際立って特異な国だと思います。まず2200年も前にあれほど強力な中央集権体制が成立した国は、ほかには見当たりません。日本は江戸時代まで封建制で、徳川幕府は全国政権だったとはいえ、仙台は伊達家が治め、薩摩は島津家が治めるという具合に各地の大名が領地を支配していました。ヨーロッパもずっと封建制で、貴族が領主として治めながら王様に仕えていたわけです。

ところが中国は2200年前に始皇帝が周代以来の封建制を否定して郡県制を採用し、官僚による中央集権国家をつくりました。その後、部分的に封建制を復活させて併用したりはしますが、始皇帝が確立した郡県制は大きな遺産となって残り、早くから文明が発達したことから、世界でもずば抜けた先進国であり続けたわけです。実際、19世紀にアヘン戦争が起きるまで世界のGDPの2~3割は常時中国が占めていました。

1750年ごろ描かれた秦の始皇帝の肖像画[Photo by gettyimages]

――すると、まず有史以来の先進国であったところに中国の大きな特色と面白さがあるということでしょうか。

出口 単に人口が多く、物資が豊かで経済発展しただけではなく、統治技術が進んでいたところに中国の特色があります。中国の中央集権体制は宋の時代に完成をみますが、この時代に特筆すべきは、全国でおこなわれるようになった科挙、すなわち国家公務員試験です。