〔PHOTO〕Gettyimages

台湾・蔡英文総統が匂わせた「中国への対抗」と「アメリカへの接近」

中華民国双十節スピーチ全訳

蔡英文政権の「二つの自信」

10月は、台湾海峡の両岸が賑わいを見せる時節だ。

1日に中国が71回目の「国慶節」(建国記念日)を祝ったと思いきや、先週末の10日には、台湾が中華民国の「双十節」(建国記念日)を迎えた。台湾では、1911年10月10日の「武昌蜂起」が、辛亥革命の起点となり中華民国の建国につながったとして、この日を建国記念日に定めている。

同日の午前9時(台湾時間、以下同)から12時過ぎまで、「109年中華民国双十節国慶大典」が、台北の総統府前広場で開かれた。以下、この式典の模様をお伝えしながら、両岸関係の最前線を見ていきたい。

〔PHOTO〕Gettyimages

昨年の式典は、総統選挙の3ヵ月前とあって、「選挙運動」の色彩が強かったが、今年の式典は、新型コロナウイルスの影響で、昨年より規模がやや縮小されたものの、蔡英文政権の「二つの自信」に溢れたものとなった。

一つは、1月に817万票という台湾憲政史上、最多得票で総統に再選され、立法委員(国会議員)選挙でも全113議席中、61議席獲得したという自信だ(これについては拙著『アジア燃ゆ』をご覧下さい)。

もう一つは、世界で最も賢明に新型コロナウイルスを抑えきったという自信だ。今年の記念祝典のスローガンもズバリ、「民主台湾 自信前行」(民主台湾は自信を持って前へ進む)である。

午前9時、広場の壇上に上がった若い男女の司会者が、式典の開会を宣言した。その瞬間、あれっ?と思った。女性の司会者の中国語が妙にたどたどしいのだ。彼女の自己紹介を聞いて再度、仰天した。

「私は盧水晶と言います。韓国から来ました。アンニョンハセヨ! なぜ私が今日の日の司会をやっているか分かりますか? 台湾の『多様な声の直行便』を示すためです」

2360万台湾人が注視している重要国家行事の建国記念式典の司会を、韓国人にやらせてしまうのだ。蔡英文政権のオープンマインドと柔軟性たるや、恐るべしである。韓国人が司会をするということは、ひょっとしたら日本人がやっていてもおかしくなかったわけだ。

 

ちなみに、9月30日夕刻に北京の人民大会堂で行われた国慶節の記念パーティは、李克強首相が司会を務めていた。「習近平新時代の中国の特色ある社会主義」を力説し、1000人以上の参加者たちは、笑みを浮かべる者とてなかった。誰もが緊張した面持ちで着席し、時折、機械仕掛けのロボットのように、最前列中央の席に鎮座した習近平主席に向けて拍手を送っていた。