大事なのは「失敗できる」安心感

なぜユーモアが大切かというと、ユーモアは、失敗を笑い飛ばせるくらいの心の余裕から生まれるからです。

「どうして〇〇できないの」「〇〇できないなんてダメじゃない」と、失敗を一つ一つカウントしていく「減点方式」の家庭は、途端に笑顔がなくなり、暗くなります。そういう家庭で育った子どもは、「失敗したくない」という気持ちが先に立ち、間違えを極端に恐れるようになります。「失敗なんてしないで育ったほうがいいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、失敗を恐れて育つことの問題は、「間違えるくらいなら何もしないほうがいい」と、新しいことへのチャレンジをしなくなってしまうことです。新しい挑戦をして小さな達成感を積み重ねたり、自分の得意を見つけたりする機会のないまま、「どうせ私の意見なんかたいしたことない」と、低い自己肯定感が一生モノになってしまうのです。

一方で、笑顔とユーモアがある家庭の子どもは、安心して失敗したり間違えたりできます。「間違ってもOK。あとで修正すればいいのだから」と、自分の考えや主張を親や先生といった周りの大人たちに堂々とアピールできます。このコミュニケーション能力や自己肯定感が、のちのち社会に出てから大きな支えになることは言うまでもありません。なぜなら、私はいつも言っていることですが、世の中に一人でできる仕事はなく、自分の得意を差し出して、相手に苦手をフォローしてもらう、という関係性を築くためには、いわゆる“かわいげ”があることがマストだからです。“かわいげ”は、どんなに優秀でも、それだけでは生まれません。失敗も笑い飛ばせるようなユーモアある関係性に育まれて、初めて身につけられるものなのです。

私がSummer in JAPANの講師の仕事をお願いするハーバード生たちは、もちろんみんなものすごく優秀なのですが、それだけでなく例外なくこの“かわいげ”を身につけています。それというのも、彼らは親に減点されるどころか“I’m proud of you.(あなたを誇りに思うよ)”と言われながら育っているからです。

廣津留さんが毎年大分で主宰するサマーキャンプ「Summer in JAPAN」の講師を務める現役ハーバード生たち。自己肯定感の高さに支えられた相手へのリスペクトに溢れており、いつも笑顔いっぱい。写真提供/廣津留真理

娘のすみれのハーバードの入学式でも、5分に1回は笑いが起こっていました。堅苦しいはずの式典でも、学部長などの登壇者と次の登壇者のスピーチの間には、学生のコンビが現れて、コメディを披露するのです。会話に笑いがあるのはコミュニケーションの基本だからです。