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日本では報じられない…トランプが「保守派」を最高裁判事候補に選んで起きること

最高裁の「保守化」は進むのか?

9月18日、リベラル派として知られるルース・ベイダー・ギンズバーグ米連邦最高裁判事が亡くなり、最高裁に欠員が生じた。その後任としてトランプ大統領が9月26日に指名したのが、エイミー・バレット連邦控訴裁判所判事である。

「保守派」とされる彼女が実際に就任すれば、9人の最高裁判事のうち6人を保守派と目される人物が占めることになるので、日本では「最高裁の保守化が進む」と報じられている。しかし実際にはどうなのか。

憲法で読むアメリカ現代史』などの著作がある同志社大学特別客員教授の阿川尚之氏に聞いた。

大統領が好き勝手に選べるわけじゃない

――バレット氏の指名について、日本の報道を見ていると「トランプ大統領が自分に都合のいい人物を勝手に選んだ」という印象を受けますが、どうご覧になっていますか。また、バレット氏はどういう人物なのでしょうか。

阿川 日本ではトランプ大統領が好き勝手に自分の政策を支持する人物を選んだかのような報道もありますが、それは誤解です。最高裁判事を含め連邦裁判所の判事は、たしかに大統領による指名と連邦議会上院の「助言と同意」を受けて大統領が任命しますが、一部の閣僚や大使のように自分の友人や支持者、大口献金者を任命できるようなタイプの人事ではありません。

エイミー・バレット氏〔PHOTO〕Gettyimages
 

なぜなら最高裁判事の仕事は、法律家としての能力がずば抜けて高くなければ務まらないからです。今回もトランプ大統領が自分の信条に近い現職判事を選んだ側面もあると思いますが、高度な法的能力という要件は、ロースクールの学生、最高裁判事の助手、学者、判事としての実績を見る限り、十分満たしています。こうした制度的な側面については、きちんと見ておく必要があると思います。

バレット氏は中西部のカトリック系の名門、ノートルダム大学のロースクール出身です。現在9人の判事が全てイェール大学かハーバード大学ロースクールの出身(ギンズバーグ判事は夫のニューヨークでの就職を機にハーバードからコロンビアへ転入し卒業)という最高裁において、これまで最高裁判事を出したことのない中西部のロースクール出身であるのは、ユニークです。