ヒラリーの悪夢、再び…? 米国「女性大統領候補」を待ち受ける「イバラの道」

討論会を見てわかったこと
橋爪 大三郎 プロフィール

黒人にも、いろいろある。ボストンで、ある黒人の教会を訪れたら、自分たちはカリブ海の出身だと言っていた。ボストンは港なので、カリブ海からその昔、港湾労働者が移住して住み着き、コミュニティをつくって教会に集まっている。自分たちは奴隷でなく、自由民としてこの国に来たのだ、というニュアンスだ。アフリカ系の黒人が聞いたら、コチンと来るかもしれない。

ハリス候補はジャマイカの血をひき、アフリカ系黒人でない。インド系でもある。彼女はわれわれの代表だ、と人びとが思うかどうか、微妙なところがある。

 

ペンスのスピーチは菅官房長官の記者会見のよう

では、両候補のスピーチの出来ばえはどうだったか。『パワースピーチ入門』を7月に出したばかりで、政治家のスピーチに関心のある私は、耳をそばだてて、ディベートの応酬に注目した。

まずペンス候補。先週トランプが行儀が悪くて評判を落したのを挽回しようと、冷静にそつなくやりとりを進めた。大きな減点なし、である。でも地味で、面白みに欠ける。なんとなく、菅官房長官の記者会見を思わせる。

そして、じっくり聞いてみると、司会の質問をはぐらかし、正面から答えないケースが多い。ハリス候補から、民主党の左派っぽい発言を引き出して、立ち位置をぐらつかせようともした。

ハリス候補は、まだ試運転の段階だ。政策をよく煮詰め、パンチラインをつぎつぎ繰り出すにはほど遠い。先週のバイデン候補の発言と、合わないと思えるところもある(グリーン・ニューディールなど)。外交は苦手なようで、中国は敵か味方かと聞かれたが、答えに説得力がない。

それでも全米デビューは、うまく行った。注目の集まった大舞台を、落ち着いてやりとげた。ハリス候補は元気で、華がある。頭はよいので、政策はこれから勉強し、スタッフとチームを組めばよいだろう。