2017年に北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の実兄、金正男(キム・ジョンナム)がマレーシアのクアラルンプール国際空港の出発ロビーで暗殺された事件を覚えているだろうか。逮捕されたのはマレーシア人とベトナム人の若い2人の女性。空港内に設置されたビデオカメラが映した一連の殺害模様は日本のTVでも放映され、今でもYouTubeで見ることができる。

監視カメラに映るベトナム人女性、ドアン/『わたしは金正男を殺してない』より

ビデオカメラに映った女性達は金正男に後ろから近づき、じゃれつくように猛毒の神経剤VXを彼の顔に塗り、素早くその場を離れた。のちに2人の女性が“普通の若い女性”だということが報じられたときは、世界中が驚いた。さらに、彼女たちがドッキリのようなイタズラ動画に出演していただけだと思い込んでいたことも、衝撃を与えた。

10月10日に公開されるドキュメンタリー映画『わたしは金正男を殺してない』は、この奇妙な暗殺事件の真相に迫ったものだ。新型コロナウィルスで劇場公開が延期されている本国アメリカに先駆け世界最速で公開される本作は、この事件が単なる政治的な暗殺事件として風化されることに警鐘を鳴らす。

マレーシアに2年ほど滞在し、裁判を待つ2人の女性の人生を紐解きながら、事件の真相と裁判の行方を追ったライアン・ホワイト監督に、事件の奥に潜む「本当の闇」について聞いた。