ジェニファー・ダウドナ(左)とエマニュエル・シャルパンティエ(右)。2015年のブレイクスルー賞授賞式での写真(photo by gettyimages)

ノーベル賞受賞の後こそ、「ゲノム編集」から絶対に目が離せない理由

「遺伝子を治療する」技術の光と闇

その科学者人生に魅せられて

これまでナイショにしてきたが、2年半ほど前、行きつけのヘアサロンの美容師さんに「この人みたいな髪型にして」と頼んだことがある。

彼はむっとした。「そんな無茶な」と思ったに違いない。

このとき見せたのは、ウェービーな黒髪のフランス人、エマニュエル・シャルパンティエさんの画像。

そう、今年のノーベル化学賞受賞が決まった女性科学者ペアの一人である。

2015年のブレイクスルー賞受賞時のエマニュエル・シャルパンティエ Photo by Steve Jennings/Getty Images

当時、私は彼女たちが開発した「ゲノム編集」をテーマに新書を書いていた。『ゲノム編集の光と闇──人類の未来に何をもたらすか』(第35回講談社科学出版賞受賞作、ちくま新書)だ。

このテーマを書いてみたいと思ったひとつのきっかけが、シャルパンティエさんの科学者人生を知ったことだった。

ノーベル賞は「まだだと思う」

病原性細菌の機能解明という元々のテーマも地味なら、パリで博士号をとった後、5ヵ国9ヵ所の研究室を渡り歩いてきた経歴も地味。

でも、一本筋が通っていて、どこかお茶目。「好きなタイプの研究者だ」と直感し、新書を無事に書き上げるために「あやかりたい」と思ったのだ。

2017年2月、日本国際賞受賞者発表の記者会見で出会ったシャルパンティエさんはイメージ通りだった。

4月の授賞式の折にフランス大使館で開催されたレセプションでは、日本語の入った名刺をくれた。「次はノーベル賞?」と水を向けると、「まだだと思う」と笑っていたが、今回、晴れて受賞となったわけだ。