『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』より

「都市の高級化」でアフリカ系アメリカ人の居場所が奪われている

オバマ絶賛の傑作映画が描く米国の分断

「ジェントリフィケーション」という言葉を知っているだろうか。これは都市のブランド化および高級化が引き起こす人口移動現象をさす。簡単に言うと、中流以下の層が住むエリアを「オシャレ」で「安全」で、「カルチャーな街」に再開発することで不動産価格を釣り上げてお金持ちを呼び寄せ、元々住んでいた人々や個人商店に立ち退きを迫ることだ。最近では宮下公園周辺の再開発がいい例だろう。

1960年代から使われるようになった言葉だが、近年、格差がますます広がるアメリカでは問題視されている。そんなジェントリフィケーションにより分断されたサンフランシスコを舞台にした映画が、『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(10月9日より公開中)だ。本作のジョー・タルボット監督は初長編デビューにして2019年のサンダンス映画祭で監督賞と審査員特別賞のW受賞を果たしており、オバマ前大統領が選ぶベストムービー(2019)にも選出されている。

筆者は先日、タルボット監督と主演のジミー・フェイルズへ取材を行ったのだが、彼ら曰く、ジェントリフィケーションは今アメリカを揺るがしている新型コロナウイルスやBLMとも密接な関係にあるという。いったいどういうことなのか。

シリコンバレーがサンフランシスコの分断を進めた

本作は、サンフランシスコのジェントリフィケーションをバックグラウンドに、アフリカ系青年、ジミー(ジミー・フェイルズ)が「自分の居場所」を探す物語だ。サンフランシスコで生まれ育ったジミーは、「サンフランシスコ初の黒人(ファーストブラックマン)」として祖父が建てたというヴィクトリア朝様式の家が忘れられない。なぜなら、その「家」にはジミーが子供の頃、仲の良かった家族と一緒に暮らした楽しい思い出が詰まっているからだ。

『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』より
 

しかし家族は離散してしまい、居場所のないジミーは親友モント(ジョナサン・メジャース)の家に居候している。そんなジミーの唯一の楽しみは、裕福な白人老夫婦が住んでいる祖父の家をこっそりと修理すること。ところがある日、祖父の家が空き家になり――というのがストーリーだ。