インドネシアの黒歴史「薔薇チーム」元隊員抜擢人事に非難噴出の背景

次期大統領候補の国防相に人権弾圧疑惑
大塚 智彦 プロフィール

悪名高い秘密部隊「薔薇チーム」

1997年から1998年にかけて、インドネシアは30年以上続いたスハルト長期独裁政権に反対する学生、労働者、人権活動家などを中心にした民主化運動が高まりをみせた。折からのアジア通貨危機による経済の混乱もあり、1998年5月21日、スハルト大統領は辞任に追い込まれ、インドネシアは民主国家としての第一歩を踏み出した。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

ところがこの過程で多くの活動家が治安当局によって誘拐、拷問、殺害そして行方不明となった。このうち学生と民主化運動の活動家23人が誘拐された事件は、9人が後に解放されたものの、1人が殺害、現在に至るまで13人が行方不明となっている。

この不明者13人はすでに殺害されているとみられているが、殺害の証拠も証人もなく、行方不明者の関係者や家族は歴代政権、そしてジョコ・ウィドド政権に対しても真相解明を強く求めている。

この23人の誘拐、13人の行方不明事件に関わったのが陸軍特殊部隊の中にあった秘密作戦実行部隊「グループⅣ」で、特にその中の12人という少数精鋭で構成された「薔薇チーム(チーム・マワール)」とされている。

この「薔薇チーム」は非合法、超法規的作戦の実行を担うチームとされ、一般人の誘拐、拷問、殺害などに関わっていたとして、民主化実現後の1999年に開かれた軍事裁判で「薔薇チームの指揮官と隊員11人」に対して禁固12ヵ月から22ヵ月の実刑判決が下されている。うち5人の軍人は軍籍はく奪という厳しい処分だった。