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インドネシアの黒歴史「薔薇チーム」元隊員抜擢人事に非難噴出の背景

次期大統領候補の国防相に人権弾圧疑惑

未成熟な民主主義国家

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領はこのほど、国防省の要職に軍幹部ら6人を抜擢する人事を承認した。ところが、国際的な人権団体やインドネシア国内の民主化組織などからこの人事に対する反対の声が噴出する事態になっている。

なぜなら6人の中に含まれている2人の陸軍准将が、かつてインドネシアで民主化を求める運動が盛り上がった1998年に発生した人権侵害事件への関与が濃厚な人物であることが明らかになったからだ。

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この2人は当時、全国的に吹き荒れた民主化運動の活動家や学生が、治安当局によって誘拐、拷問、殺害、行方不明となった事件への関与が疑われた陸軍特殊部隊の秘密作戦チームの隊員だったという経歴の持ち主なのだ。

当時の陸軍特殊部隊の司令官は現在のプラボウォ・スビアント国防相でもあることから、国防相自身の昔の部下への強い意向が今回の人事の背景にあるのは確実とみられている。

かつての部下、それも人権侵害事件への関与が濃厚とされる部下を政府要職に復帰させたプラボウォ国防相の「政治的倫理観」も問題視されているが、加えて過去の人権侵害事件について真相解明を国民に約束しているジョコ・ウィドド大統領が、この人事に正面切って反対しなかったことから、大統領への失望、批判をも招く事態となっている。

1998年に国民が長年望んだ民主化を実現した際、その混乱に乗じて起きた数々の人権侵害事件の大半は実態が未解明のままで、その清算が進まない中で当時の「容疑者」が知らない間に復権しているインドネシアの現状に、「この国の民主主義は未成熟」との指摘もでている。