新型コロナの影響で注目を集めている「マッチングアプリ」。スマホ一つで新たな出会いを探せるため、婚活の主流となりつつあります。

FRaU webでは、実際の取材に基づいた「アプリ婚活」のリアルを、共著作家の山本理沙さんと安本由佳さんによってノンフィクション小説としてお届け。アプリの「モテ技」テクニックも満載です。

「結婚とは」「幸せとは」について見つめ直し、見事ベストパートナーとなった留美と直彦。一方で舞台から姿を消してしまったアプリの女王・さくらのその後は…?

【これまでのあらすじ】
結婚に焦る武田留美(32歳)商社マンの工藤直彦壮絶なアプリ婚活の末、ついに結ばれた。番外編後編では、突如姿を消したアプリの女王・さくらの本音が明らかに。
これまでの連載「本気でアプリを始めたら」を読みたい方はこちら

商社マンなのにピュアすぎる男

――「さくらさんは何も悪くない……!」

『ナオ29歳』こと、直彦の真剣な眼差しを思い出して、さくらはふっと頬を緩めた。

誰もいないリビングで、冷やしておいた白ワインをグラスに注ぐ。前夫と離婚して今は実家に戻っているが、両親はもうとっくに寝てしまった。

美容のため、お風呂上がりは常温の水と決めている。しかし今夜は少し飲みたい気分だった。

『今日は楽しかったです!もし良かったらぜひまた一緒に……』

スマホには、直彦からさっそく次の誘いが届いていた。バツイチだと告げたにもかかわらずアプローチが届くのだから、気に入られているのだろう。

だが、さくらは返信をしなかった。

直彦は東京に生息するアラサー商社マンでありながら、一切スレたところがない。少し話しただけで誠実さが伝わってくる男だった。

……つまり、ピュアすぎるのだ。反応のすべてに予想がついてしまって、それがさくらには物足りない。別れ際、ふいに抱きしめられたのは予想外でときめいたけれど。

昔の自分だったら「イケメンだし」と突き進んだかもしれない。しかし酸いも甘いも知った今、冷静にわかることがある。

彼とは合わない。彼も、自分のような女より不器用でもまっすぐな女性といた方がいい。