福岡と東京、食文化の違いに戸惑いも

ーー最新作の映画『みをつくし料理帖』では、主人公・澪の幼馴染み、野江を熱演。大坂(当時の名称)の大洪水により、東京・吉原の遊郭に引き取られ幻の花魁・あさひ太夫を名乗ることになるが、その遊郭で食べた料理で故郷を思い起こすシーンがある。奈緒さん自身、上京してから地元・福岡の味を思い出したことはあったのだろうか。

上京して調味料を揃えて料理を作ったら、全然知らない味にできあがりました。そのときはじめて九州の醤油が甘いことを知りました。実家でいつも使っていた醤油を取り寄せて作ってみると、馴染みの味に仕上がって、すごくホっとしたことを今でも覚えています。お出汁も実家で使っていた福岡の味ですが、外で食べると違いをすごく感じます。それは大人になればなるほど。

東京に来て自分の住んでいた街と違う料理に触れることが増えて、『これは京風だ』『これは東京っぽい』という違いをすごく感じるようになったのと同時に、やっぱり自分が生まれ育って慣れ親しんでいる味が一番美味しいと感じ、安心するんだなってことに気づきました

撮影/生田祐介

ーー本作で野江は澪が作った料理を食べるシーンが多く登場する。それは奈緒さんも「私は食べる係でした」と微笑みながら話すほど。その中でも食文化の違いを感じる場面があったという。

「ところてんを甘くして食べることに衝撃を受けました。地元は酢醤油で食べていて、ごはんの一品に出てきていたので。撮影で甘いところてんを食べたとき、これまでと違う美味しさで、小さい頃にこの味を知っていたら、心躍るおやつだっただろうなと思います。劇中で幼い頃の澪と野江が楽しそうにところてんを食べているシーンがあるんですが、甘いところてんを食べた瞬間、その2人の思い出に触れられた。食で繋がっていると感じました

ーー澪を演じた松本穂香さんとは撮影の合間に食べ物の話で盛り上がっていたそうで、澪と野江と同じように現実世界のふたりも料理で引き寄せられていた。

「松本さんは焼き芋が好きと聞いて、美味しく食べられるお店がないか調べました。『松本さんに美味しい焼き芋を食べてほしい』『一緒に食べに行きたい』と思って調べていると、今まで馴染みのなかった食べ物やお店も気になってきてレパートリーが広がりましたね」