ALS(筋萎縮性側索硬化症)を検索すると「感覚があるままに体が動かなくなる病気」という説明が多くあります。もう少し詳しい記事を探すと「筋肉が動かなくなってしまう」という説明がなされています。ではこの「感覚があるままに動かなくなる」という状態はどのような感覚なのか? 今回は私の現在の状態までの上肢(手)のお話をしたいと思います。

ニャンちゅうなどの声でおなじみの声優・津久井教生さん。2019年3月に突然転んだことから異常を感じ、半年の検査入院の末、9月にALSと診断されました。告知から1年経った今、ブログでは要介護4になったことも明らかにしています。ALSとはいったいどのような病気なのか。津久井さんが率直な思いと体験を伝えている連載「ALSと生きる」。前回は「転びやすくなった」という段階からどのように下肢が動かなくなっていったのかを伝えていただきました。今回は、腕についてのことをお伝えします。
2019年11月にニャンちゅうとピアノを弾いた時の写真。指で鍵盤をたたかなければならないピアノを弾いたのはこれが最後になったという 写真提供/津久井教生
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はじめはなんともなかった

前回書いた通り、ALSに気づいたきっかけは下肢(足)の異常で、病名がわかる前から「足が動かなくなっている」と認識していました。しかしながら足に続き、検査してALSという病名が分かる直前からあらわれ始めた、上肢(手)が動かなくなる現象に対しては、さらなるショックを受けました。

もちろん下肢(足)が動かなくなる事は大変な事です。役者としても年に数本ゲストとして出演させていただいた舞台での、私の得意技の演技でもある「客席乱入」は健全な足さばきがあってのものです。また「絵空事計画」という朗読ライブ集団を主宰し、事務所の若手声優の皆さんと「81ライブサロン・絵空事計画・朗読ライブ」を定期的に上演している身分として、下肢が動かなくなるのもたしかにショックなのです。しかし高校生からライブハウスに出入りさせていただき、音楽も職業にしている身としては、手が動かなくなり「楽器が弾けなくなる」のはかなりのダメージです。

始めの頃は上肢(手)は「なんともありません」……と言ってもいい状態でした、足の違和感をメチャクチャ感じている2019年3月から5月までは足の違和感と衰えを腕力で補っているくらいでしたから。

体育座りから立てなくても、そばにあるものにつかまって軽々と立ち上がる、もちろん腹筋の力もあるのですが、引き寄せる力は全く問題ありませんでした。布団から起き上がるときも腹筋と同時の手の反動で上半身を起こし、そこに足の力をうまく乗せて立ち上がっていました。後々にPT(理学療法士)さんをはじめとしてケアマネージャーさんや様々な関わってきた方々から言われたのですが「運動神経」と「体バランス」で下肢の不具合を上手く補っている、という事でした。

そのように補えた理由は「上肢(手)が動く」からでした。そして私はこの時点では上肢(手)はまったく問題ない個所だと思っていたのです。