「上級国民」大批判のウラで、池袋暴走事故の「加害者家族」に起きていたこと

家族は「逮捕してもらいたかった」と話す
阿部 恭子 プロフィール

バッシングに苦しむ日々

「正直、逮捕してもらいたかったです……」

家族はそう話す。

被告人が逮捕されなかったのは、旧通産省の官僚だったからだという「上級国民」バッシングが始まった。ネット上では、「死刑にすべき」といった厳しい批判や被告人への罵詈雑言で溢れ、被告人の自宅には嫌がらせの電話や手紙が届くようになった。バッシングは被告人だけにとどまらず、「家族も同罪」「家族も死刑」といった書き込みもあった。

危険なのは塀の中より社会である。家族にとっては、被告人が警察署内に拘束されている方がよほど安全で気が楽なのだ。

 

ところが、ネット上では加害者の不逮捕に家族も関係した可能性があるという憶測が飛び交っていた。被告人は事故発生直後、「救急車が到着する前」に息子に携帯電話をかけていたと報道された。

しかし、実際、息子が電話を受けたのは事故から55分後だった。この報道によって、被告人が息子に揉み消しや不逮捕を依頼したのではないかという疑惑が生じたようである。

本件を報じるテレビ番組では、「フレンチに遅れる」といった「上級国民」を強調するテロップが使われバッシングは過熱したが、被告人が向かっていたのは、遅れても構わない馴染みのごく普通の小レストランであり、「フレンチ」という表現には違和感があるという。

「医師から運転を止めるように言われていたにもかかわらず運転していた」など、悪質性を裏付ける報道が続いたが、そのような事実はなく、車を擦ったりぶつけたりといった家族が不安になるような問題も起きてはいなかった。

それでも加害者家族は、罪を犯しても逮捕されない卑怯な「上級国民」として形成されつつある世論に抗う術はなかった。報道陣は家族のところも来たが、加害者家族の立場で発言しても揚げ足を取られ、さらにバッシングが酷くなるとしか考えられず沈黙を貫くほかなかったのである。