写真は2015年の生命科学ブレイクスルー賞受賞時のもの〔PHOTO〕Gettyimages

ノーベル化学賞受賞のヤバすぎるゲノム編集技術「クリスパー」とは何か

まさに「生命のコードを書き変える」魔法

今年のノーベル化学賞は、ゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」の基礎研究を行ったジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャルパンティエの両博士に授与された。

受賞者を発表したスウェーデン王立科学アカデミーのヨラン・ハンソン事務局長は「今年の(化学)賞は生命のコード(遺伝情報)を書き変える技術に関するものです」と紹介したが、まさにゲノム編集クリスパーとは何かを的確に表現した言葉だった。

農作物の品種改良から難病治療まで多方面に応用

2012年、カリフォルニア大学バークレイ校のダウドナ教授と(当時)スウェーデンのウメオ大学に在籍していたシャルパンティエ博士らの共同チームが発表した論文は、世界の生命科学者の間で一大センセーションを巻き起こした。

写真は2015年の生命科学ブレイクスルー賞受賞時のもの〔PHOTO〕Gettyimages

https://science.sciencemag.org/content/337/6096/816.full

これは元々、細菌や古細菌のDNA上で発見された「クリスパー(CRISPR)」と呼ばれる特殊な反復配列が、我々人類を頂点とする、地球上のあらゆる生物のDNA(ゲノム)を自在に改変する技術に応用できることを証明する論文だった。

この技術はやがて「クリスパー・キャス9」と呼ばれるようになり、生命科学やバイオ技術に関する、ほぼ全ての分野に応用されるようになった。

たとえば農作物の品種改良では「栄養価の高いトマト」「褐変しない白色マッシュルーム」「干ばつに耐えられる小麦」など多数の新品種がゲノム編集によって開発され、その一部は既に米国などで商品化されている。

また医療への応用では「鎌状赤血球貧血」や「ベータ・サラセミア」など遺伝性の難病がクリスパーによって症状が大幅に改善するなど次々と成果が報告されている。

 

いずれは癌や糖尿病のような罹患率の高い病気も、ゲノム編集で根治できる時代が来ると言われ、既にそこに向けた臨床研究も進んでいる。