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知的障害者はセックスしてはいけないのか?

タブー視される「知的障害者と性」

タブーにされがちな「知的障害者と性」

この事件をご存知だろうか。

昨年(2019年)12月、自宅である佐賀県武雄市の市営住宅のくみ取り式トイレに女児を産み落とし、今年1月に発見されるまで放置したとして、軽度の知的障害のある女性被告が死体遺棄の罪に問われた。被告は「妊娠を相談できる人はあまりいなかったです」と答えたという(「相談できなかった妊娠 軽度の知的障害の被告 女児死体遺棄事件 27日に判決」毎日新聞8月26日)。

記事によると、被告側は「出産を予期できず、遺体があるとの認識がなかった」として無罪を主張した。検察側は、被告が交際する男性に「出産したみたい」と伝えたことなどから、「出産に気付かなかった可能性は考えられない」としている。「流産」について被告は法廷で、「言葉の意味はあまり分かりません」と語っている。

女児の父親である交際相手にも知的障害があり、2人で検査薬で調べた結果、妊娠がわかった。女性被告は法廷で「妊娠はうれしかった」と話す一方、一度も産婦人科に行かないまま、同居する家族に打ち明けることもできなかったという。

「家族には言いづらかったです」

この一言から様々な背景を想像してしまう。

結果的に8月27日の判決で、佐賀地裁の今泉裕登裁判長は女性被告に対し、懲役1年2ヵ月、執行猶予3年を言い渡した。争点となっていた「出産の認識」については、「出産直後、交際相手に対し、『流産したみたい』と伝えていたなどして、「出産の認識はある」と認定した。

その上で、「妊娠を唯一知っていた交際相手にも知的障害があり、妊娠出産に対して適切な対応を取ることが難しく、周囲から十分な支援を受けることができなかった」と述べた(「自宅トイレで出産……“乳児の遺体遺棄”女に有罪判決」九州朝日放送8月27日)。

この事件は、我々に「知的障害者は妊娠や出産について理解できるのか?」「避妊の方法は知っているのか?」「子育てはできるのか?」「そもそも知的障害者に対する性教育は行われているのか?」といった、知的障害者のセクシュアリティに関する様々な問題を露呈させた。

 

本稿では、この事件を一つの契機とし、知的障害者における「性の権利」を取り巻く現状について考えてみたい。