夫婦の絆を確認したくて、始めた不妊治療

セックスレスはあるが、人間的に夫のことは認めていたし、信頼もし合っていた。夫婦間にセックスというものがなければ、良好な関係なのだ。そこで、美奈子さんは夫婦の絆を強めるために、子供を生もうと思った。

「夫に子供を作ろうと言ったら、喜んでくれました。子供を作ることが目的ですが、心の中では、“これでやっと夫とセックスができる”という思いも正直ありました。でも、夫はPCを取り出して、ブックマークしていた体外受精をするクリニックのサイトを見せてくれたんです。夫も、そろそろ子供が欲しいと思っており、私とは性交渉をしたくないので、人工授精や体外受精について調べていたことは明白。あれはショックでした。でも、だからこそ、それでもいいから、絶対に妊娠してやろうと思ったんです」

当時、美奈子さんは30代。まだまだ年齢的には妊娠は簡単だ、とタカをくくっていた。しかし、妊娠までは壮絶な道のりだった。人工授精で妊娠できなかったため、体外受精に踏み切った。採卵は予想以上の痛みがあり、心身共に辛かった。

「痛みを感じない方もいるようですが、私は卵管造影検査も採卵も痛くて辛かった。でも、それ以上に何が辛いって、夫が放出した精子を見ることですよ。カプセルに入った精子を胸元に挟み、始業前にクリニックに通うという心理的な負担が重くて。夫はトイレで、アダルトコンテンツを見ながら放出するんです。私では反応しないのに、一人でできることが受け入れがたかった

自分では放出できないのに、AVではできる。そんな夫の姿に、心が壊れそうに……。photo/Getty Images

不妊治療費は夫が全額を出したので、詳細は分からないが、相場から判断し300万円程度ではないかと踏んでいる。

「夫は金と精子は出すが口を出さない。“後はよろしく”って感じで、丸投げ。頑張って2年間は続け、3回目の体外受精で妊娠できたんです。8週目に心拍が確認できたときは舞い上がりました。すぐに母子手帳をもらいに行ったんです。あれは嬉しかったな。ホントに舞い上がりました。でも、次の検診で、お腹の中の子どもの心拍が確認できなかった……」