初代葱師・清水寅氏

「この売上でどうやって家族を養うの?」ベテランに嫌われた新人農家が見た現実

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(7)
「1本1万円のネギが売れている」そう聞くと驚く人も多いのでは?
『ねぎびとカンパニー』社長・清水寅氏は脱サラ後に農業を始めた中途参入組。しかし今では『ねぎびとカンパニー』のネギは1本1万円の価値が付くほどに…。
注目書籍『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』から毎日連載企画!
第7回では、ネギ農家デビューした寅氏が“栽培面積”にこだわったもう一つの理由について触れていきます。>>今までの連載はこちら!
 

売上400万円あれば十分だよ

栽培面積を増やすことにこだわったのは、もちろん「日本一」もあるのですが、もっと切実な事情がありました。

農業を始めた頃、農協の人、親戚の農家、普及センターの人など、多くの人から話を聞きましたが、農協の人がこう言うのです。

「売上が400万円もあれば、生活できる。いきなり400万円いったら、農協から表彰されるよ」

いったいどういうことなのか、意味がわかりませんでした。少し前まで何千億円の売上の会社を管理していた自分としては、あまりの感覚の違いに愕然とした。ケタがいくつも違う。

400万円はあくまで売上であって、そこから資材費や燃料費、地代などを引けば、250万円も残りません。僕の場合、その250万円から従業員の給料を払う必要がある。どうやって生活していけるのか、正直「???」でした。

実際、初年度の売上は400万円でしたが、従業員やパートさんに給料を払えば赤字でした。機械への初期投資もあったため、貯金を使い果たし、2年目にはスッカラカンでした(実際は借金をしてマイナス90万円ぐらいでした)