ネギ1本1万円で売る男が“ネギ”を選んだ理由は…「味にこだわりある人がいないから」!?

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?(4)
清水 寅 プロフィール

ストレスで病気に

会長は社内でも厳しいと言われていたけれど、僕は厳しいと思ったことがありません。すごく可愛がってもらったし、いろいろなことを教えてもらった。いただいた手紙やファックス、発言メモまで、いまも大切に保管している。いわば心の師です。

とはいえ、雇われ社長というのは、絶対に失敗できません。特に僕は責任感が強すぎるタイプなので、「もし業績が上向かなかったら、死んで詫びよう」とまで考えていました。比喩ではなく、本気で死ぬつもりだった。

でも、積もり積もったストレスが体に出始めます。入社時の視力は2.0だったのですが、30歳の頃には0.1になっていた。

汗をかかない病気にもなりました。後天性無汗症という難病で、体の一部しか汗をかかないため、体温が下がらない。万全の注意をはらわないと死んでしまう。現在も、夏場は氷水をかぶりながら農作業をしています。

この病気が厄介なのは、体が熱くなるだけでなく、頭もボーッとしてしまうこと。この症状が出ると、事務作業もできなくなってしまう。各地の病院にかかりましたが、治療法はなく、炎天下では無理しないことを心がけるしか対策がありません。

※画像はイメージです。Phto by iStock
 

群発頭痛も発症しました。映画でハリー・ポッター役を演じたダニエル・ラドクリフさんの持病として有名になりましたが、目の奥をナイフでえぐられるような痛みが走る。これも治療法がないので、鎮痛薬を飲んで横になっているしかない。

こうした病気は、いまも治らないままです。風邪なんかほとんど引いたことがないくせに、難しい病気になってしまう。

実は、病気は他にもかかえているのです。スポーツをやっていた頃からですが、現在もときどき、足に激痛が走って歩けなくなります。さらに農業を始めてからは、梅核気(ばいかくき)とも呼ばれる咽喉頭(いんこうとう)の異常や狭心症という病気が加わった。梅核気はストレス性の病気で、のどに梅の種がつまったような感じになり、息がしにくくなる。

でも、当時は本気で「死んでもいい」と思っていたので、病気なんて怖くもなんともありませんでした。ただ一度だけ、「このままじゃヤバイのかも」と感じた出来事があった。数年前に結婚した嫁さんが、「あんた、なんか死にそうだよ」と、僕を無理やり外へ連れ出したことがあったのです。顔色が異常に悪かった。

ストレスが体の内外に噴出しているわけで、潮時だったということでしょう。それに、「そろそろ自分で事業をやってみたいな」と思うようにもなっていたのです。自分の責任でやるぶんには大失敗もできる。そんな挑戦をしてみたいと。