今年もノーベル賞の季節がやってきた。称賛する記事はほかに任せるとして、ここでは、同賞をめぐる“知られざる暗黒面”に焦点をあててみたい。
はじめに、ドイツの物理学者、フィリップ・レーナルト(1862〜1947年)の発言を読んでいただこう。1905年の物理学賞受賞者だ。
そう、このレーナルトは、強烈な反ユダヤ主義者でもあった。そして、アインシュタインらの理論物理学に対抗するかたちで「ドイツ物理学」を提唱。科学は、インターナショナルでも中立的でもなく、人種的・血統的に規定されているとしたのである。
現在からみれば「トンデモ」以外のなにものでもないが、時代は追い風になった。ナチ党が1936年に科学賞を創設したとき、レーナルトはまっさきにその対象者となったのだ。彼は1924年にヒトラー支持を表明していた。ヒトラーが政権を握ったのが1933年だから、これはかなり早い行動だった。