“動物を乱暴に殺す”日本は、世界からこんなに遅れていた…!

「豚」から見えてくる「重要な問題」
岡田 千尋 プロフィール

腹の中で子が大きくなり、分娩直前になったら今度は分娩ストールという、同じく拘束檻に入れられる。

初産のときなどは、母豚はなにもないコンクリートの上であっても、巣の材料になる素材を探す行動を見せる。子豚の安全をふかふかの草や藁で守るのが母豚のやり方だが、それをすることは許されていない。

子供が産まれ、拘束された状態でお乳をあげ続ける。このとき、知らない人が近づいてくると母豚は必死で警戒する声を発し、ときに水を飛ばしてみせ、子豚を守ろうとする。彼女にはそのような無意味な抵抗以外、為す術がない。

生後すぐに子豚たちは無麻酔で尻尾を切られ、また男の子豚は無麻酔で陰嚢に切込みを入れられ睾丸を抜き取られる。このときの痛みと恐怖で子豚が悲鳴を上げ、母豚も一生懸命に抗議の声を上げる。目の前で子供が痛めつけられているのに、何もしてやれないのはどんな気持ちだろうか。

この分娩ストールは子豚を潰さないためだと言われるが、実際には分娩ストールでも子豚の踏み潰しは何度も何度も起きる。母豚に罪はなにひとつない。振り返ることすら、場所を移動することすら彼女たちにはできないのだから……。

3週間子豚とともに過ごし、母豚はまた子を孕まされ、妊娠ストールに拘束される。この人工授精までの数日だけ拘束を解く農家もあるが、拘束し続ける農家が60.7%(*1)を占めている。

このサイクルを4回~6回繰り返し、子を産めなくなってきたら殺される。

 

殺されることが決まり、ストールから出された"廃用"の母豚の様子とはどのようなものだろうか。養豚場で働いていた方が語る。

「やがて生産効率が落ち経済的価値がなくなれば廃用母豚となり、まるで刑務所努めを終える日のように分娩ストールの扉が開く。

はしゃぐように、飛び跳ねるように、当たり前の喜びを感じるように通路を歩く廃用母豚。その希望に満ちたその背中の先にあるのは、眩しい太陽ではなく、真っ赤な最期である。

歩けることが嬉しくてたまらない様子の母豚だが、屠畜場では前には進みたくない衝動に駆られるのだろう。

彼女たちが最後に目にするのは自分を殺す人間の顔だろうか、それとも床に溜まった大量の自分の血だろうか。それとも分娩ストールで21日間授乳した、自分の子供の幻だろうか。

私は、廃用が決まって農場の通路を嬉しそうに歩く母豚の後ろ姿が忘れられない。

もしも彼女たちが言葉がわかって、君たちはこれから殺されるんだよと教えられたら、彼女たちはどんな後ろ姿で歩いただろうか。

どんな涙を流すだろうか。

それとも、拘束からの解放は死を上回るものだろうか」

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