『半沢直樹』面白さの理由

「この間オンエアを観たら、やっぱり面白かったです、『半沢直樹』(笑)」

“演劇界の最強ユニット”と称される生瀬勝久さん、池田成志さん、古田新太さんの3人による「ねずみの三銃士」の第4回企画公演が、10月6日からPARCO劇場で上演される。9月中旬、舞台について稽古後にインタビューをした。「最近は、ドラマの影響で、舞台俳優のタフな芝居に注目が集まっていますね」と切り出すと、成志さんの目がギョロリと動き、その口から冒頭の発言が飛び出した。

「僕の出演は前半の4話までだったけど、僕の演技がどうかは置いといて、あそこまで話に引き込ませる力は、監督が、俳優が持っている熱量を十分に引き出せていることも大きかったと思います。『半沢〜』はお話も面白いんだけど、最終的に正義は勝つってことはわかっているわけじゃないですか。善悪の対立の構図は、『水戸黄門』とか紙芝居で見た昔話とかにあるようなオーソドックスな展開です。

この間観た8話は、箕部幹事長役の柄本(明)さんは怖いし、段田(安則)さんも不気味だし、みのすけは小者っぽさがよく出てるし(笑)、半沢の大先輩役の浅野(和之)さんもいい味出していた。出演者がみんな知っている人ばかりだから、『気が散るかな?』と思いきや、素直な気持ちでストーリーを追えたんです。商売柄、普段ドラマを観ていると、『この人、ちょっと拙いな』とか、余計な感想を持つことが多い僕が、半沢の場合は正味50分、話に没入できたので、そこはやはり芝居の力なのかなと思いました」

『半沢直樹』で成志さんが演じたのは、セントラル証券営業企画部次長“忖度の男”諸田祥一。銀行と証券が対立するシーンは、短い場面だったにも関わらず、2日間に渡って撮影された。

「監督の熱量がすごくて、本番も、だいたい10回ぐらい撮るんですよ。映画かと思うようなセットでずっと大声出しながら、引きで撮って、次は寄りで撮って……みたいなことが延々続く。古田(新太)と(市川)猿之助さんの掛け合いなんて、相撲みたいな感じで、思い出すと笑っちゃうけど、現場は張り詰めた雰囲気だから誰も笑えない。そりゃあ目も血走りますよ(笑)。ただ、みんな舞台で鍛えられているから、本番10回でも、毎回100%以上の力でやれる。しかも舞台の稽古と同じで、一回一回微妙に芝居を変えてもいいわけです。観た人からは、芝居が過剰だって冷やかされたりもするけど、監督の指示は一貫して“もっと過剰にやってほしい”でしたね(笑)」

撮影/阿部章仁
いけだ・なるし
1962年生まれ。福岡県出身。早稲田大学在学中に第三舞台に参加し俳優活動を開始。つかこうへい、三谷幸喜、デヴィッド・ルヴォー、宮藤官九郎、いのうえひでのり、長塚圭史、前川知大ら、様々な演出家の舞台に出演。映画、ドラマでも活躍。10月6日に最終回を迎えるドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』では経理課長の白兎吉明役で出演している。

俳優同士「ガチのぶつかり合い」が楽しい

現場に熱量が感じられれば感じられるほど、俳優とは、やる気になれるものらしい。

「福澤監督の映像へのこだわりは凄まじかったです。現場では、『こうしなきゃダメなんだよ!』って檄ばっかり飛ばしていて、最初はちょっと怖かったですけど、だんだん『この人の熱量はすごい』と思うようになると、ついていこうと思っちゃう。しかも、ただ過激にやろうとしているんじゃなくて、根底には、『視聴者にドラマを見てスカッとしてもらいたい』という哲学がある。あれだけ熱を入れて、時間をかけて撮っている現場だとわかれば、映画俳優でも舞台俳優でも、絶対に嬉しいはず。役者って単純なので、ガチのぶつかり合いが楽しくてやってる。集中して役を演じられることが、1番の快感なんです」

ハイスピードでストーリーにのめり込める感覚は、成志さんが子供の頃に観たドラマにも重なった。

「僕が子供の時に見たドラマって、渋いおじさんとかおばさんが大勢出てきた。人生の経験が豊富な人がいい台詞を言うから、子供の心にも響いたと思うんです。僕が役者を目指すきっかけになった舞台も、幼い頃、親に手を引かれ初めて観た小沢昭一さんの『しゃぼん玉座』の一人芝居だし、映画は『男はつらいよ』シリーズが好きでした。『半沢直樹』も、子供から大人まで、シンプルに、『あー面白かった』って言える作品ですよね」