東大教授・宇野重規が警鐘を鳴らす!独裁的指導者が望まれる危うさ

「民主主義の危機」が来た
宇野 重規 プロフィール

問い直される民主主義

かつて世界の国々は、早い遅いという違いはあれ、いつかは民主化するという「常
識」がありました。

独裁的な国家においても、経済の発展のためには所有権の法的保護や公正な裁判制度の導入が不可欠です。

経済が成長すればやがて中間層が育ち、そのような中間層はさらなる自由化と民主化を要求するでしょう。

結果として、開発独裁国もいずれは民主化していくのであり、いわば市場経済と自由民主主義体制とが手に手を取り合って発展していくと考えられたのです。

ところが、このような考え方は現在、大きく揺さぶられています。

経済成長にとって、自由民主主義は本当に不可欠なのか、むしろ独裁体制の方が望ましいのではないか。

成長の果実の再配分による平等の実現など、民主主義にとっては経済成長が必要であるとしても、その逆は必ずしも当てはまらないのかもしれない。

このような考え方が力をもつにつれ、経済成長と民主主義、あるいは市場経済と民主主義の関係が問い直されるようになったのです。

民主主義は危機を乗り越えられるか

このように、民主主義は現代において多様な危機に遭遇しています。民主主義がそれを乗り越えられるかは、まだわかりません。

そこで問われているのは、民主主義の力によって格差を縮小し、平等を確保することができるのか、人と政治をつなぐ新たな回路を見出すことは可能か、民主主義は真に人類が共有しうる共通の課題か人間の人間らしさ、個人の尊厳や平等をいかに正当化できるか、そして、パンデミックのような緊急事態に民主主義は対応できるのか、といった問いです。

『民主主義とは何か』では、民主主義という言葉の生まれた古代ギリシアから歴史を辿りながら、これらの問いに答えていきます。