東大教授・宇野重規が警鐘を鳴らす!独裁的指導者が望まれる危うさ

「民主主義の危機」が来た
宇野 重規 プロフィール

独裁的指導者の増加

気がついてみれば、世界各地で独裁的手法の目立つ指導者が多くなりました

自らへの批判に耳を貸さず、気に入らない閣僚を次々にクビにする米国のトランプ大統領ばかりではありません。

ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩委員長、フィリピンのドゥテルテ大統領、トルコのエルドアン大統領など、独裁的とされる指導者の名が次々と挙がります。

ある意味で、民主主義の自己統治能力に疑問が投げかけられるなか、独裁的指導者の言動ばかりが日々の報道を賑わせているといえるでしょう。

 

かつてアメリカの政治学者サミュエル・ハンチントンは、『第三の波』において、1970年代に民主化の「第三の波」が起きたと論じました。

アメリカ合衆国の独立やフランス革命に始まる第一の波、第二次世界大戦以降の第二の波に続き、南欧諸国や中南米、アジア諸国において民主化の三度目の波が生じたと主張したのです。

ハンチントンによれば、それぞれの波の後には反動期もありました。その意味でいえば、現代は民主化の「第三の波」の反動期なのでしょう。

民主主義への根本的な懐疑

あるいは、問題はより深刻なのかもしれません。現代では、さらに根本的な民主主義への懐疑が広まっているからです。

例えば中国ですが、胡錦濤時代までは、将来的には本格的な直接選挙や言論の自由を導入することを含め、欧米的な民主化を目指すとしていました。

これに対し、習近平体制に移行して以降、欧米の民主主義を否定し、中国独自の路線を強調するようになりました。

重要なのは秩序の維持と国民生活の安定・発展であり、それを保障できるならば、欧米的な民主主義よりも共産党の独裁体制の方が望ましいというわけです。

増加する「独裁的指導者」たち(photo by gettyimages)

このような、いわば「チャイナ・モデル」は東南アジアや中東、アフリカなどの独裁的指導者にとって魅力的なものになっています。

このような「チャイナ・モデル」は先進民主国とされる国々にとってもよそ事ではありません。

グローバル化とAI(人工知能)による技術革新が進むなか、いち早く変化に対応し、迅速な決定を下すにあたっては、民主的国家よりもむしろ独裁的国家の方が好都合なのではないか。そのような声を聞くことも珍しくなくなってきました。

2020年のコロナ危機においても、この意見が再び聞かれることになります。

民主的な政治過程にはどうしても時間がかかります。独裁的指導者の一存で物事が決まるならば、そのようなトップダウン方式の方が、変化の激しい時代には適合的であるというわけです。