竹中平蔵氏と中国・習近平政権、提唱する「経済政策」がこんなに似てきている

日中で共鳴する新自由主義の行方(3)
梶谷 懐 プロフィール

さて、このコンセッション方式に代表されるように、政府が民間資本を巻き込みつつ、さらには事前の法規制に縛られることもなく、いわばフリーハンドで「経済効率性」を求めて国家が強力に産業政策を推進していく姿は、英エコノミスト誌によって、習近平政権下の洗練された国家資本主義の形態だとして、「シーノミクス」と名付けられている(これは習近平主席の「習」の読みに由来する。The Economist、2020)。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

Economist誌の分析によれば、シーノミクスには3つの要素がある。1つ目は、企業債務の拡大を管理・抑制しながらの持続的な経済成長、2つめは行政手続きの効率化、三つめは国有企業への民間資本の参入を積極的に認めることによって、国有企業と民間企業の境界を曖昧にすることである。

これらの要素はいずれも、政府が市場から退場するのではなく、民間資本と協力しながら生産要素の効率的な配分を進め、グローバルな資本主義の下での成長を図る、という習近平政権における中国の中長期的な経済成長戦略と深く結びついている。

このことを端的に示す事例として、同誌は、以前には珍しかった破産や特許訴訟が、習政権が発足した2012年以降5倍に増えていること、行政効率の改善により今は9日間で会社を設立できるようになっていること、国有企業は財務状況を改善して民間資本を集めなければならなくなっていること、などを挙げている。

レギュラトリー・サンドボックス制度にみられるように、政府と企業がフリーハンドを有する形で今後の経済と社会の枠組みのルールを「事後的に」作り上げていくこと。コンセッション方式に代表されるように、民間資本と協力しながら生産要素の効率的な配分を進めること。これに、「行政のデジタル化推進による効率性の向上」を加えてもいいだろう

これらはすでに述べたように、スーパーシティ構想が前提としている「政府と市場との新しい関係」においても重要な要素となるものである。それらが、現在の中国が進めようとしている洗練された国家資本主義の形と重なって見えるのは筆者だけだろうか。

共鳴する、竹中氏と習政権

これまで、第1回、第2回を通して、竹中平蔵氏と中国特に改革派の知識人との「意外なつながり」についてみてきた。もちろん、竹中氏がアメリカの経済学者に影響を受けたように、中国政府の政策や経済学者に直接影響を受けているわけではない。また、彼が盛んに提言している政策の中には、ベーシック・インカム制度のように、中国社会ですぐには導入が進むとは思えない政策もある。

それでも、小泉政権時代からその構造改革路線が中国で高い評価を受けてきたのは事実だし、すでにみたように彼が第二次安倍政権の下で提言している政策は、スーパーシティ構想も含め、習近平政権が進めている国家と民間資本が一体となった経済戦略(シーノミクス)とその根本で共通するものを持っている。その意味で、竹中氏の目指す経済改革と、ここ25年ほどの中国経済の方向性は明らかに「共鳴しあっている」というのが筆者の結論である。