竹中平蔵氏と中国・習近平政権、提唱する「経済政策」がこんなに似てきている

日中で共鳴する新自由主義の行方(3)
梶谷 懐 プロフィール

ただ、注意しなければならないのが、このレギュラトリー・サンドボックス制度が、実際にそう銘打っていなくても、実質的に採用されているようにみえるのは、中国社会がそもそも「法の支配(rule of law)」が極めて脆弱な社会だということと深い関係があるということだ。

レギュラトリー・サンドボックスが採用された都市では、規制やルールはイノベーションという「結果を出す」ための存在となり、「法の支配」で重視されるような「政府を縛る」という側面はそれほど重視されない。その意味ではむしろ、竹中氏らが強調する、「事前的な規制から事後的チェックを行う政府への転換」とは、中国のような法の支配が弱い社会における、革新的なテクノロジーへの対応を、日本を含む先進国が模倣しつつある、という側面があるのではないか。

 

公共事業に対する態度も似ている

市場における「政府の役割」の根本的の変化、ということでもう一つ重要なのは、竹中氏と原氏との共著でも推奨されている地方公共事業に対するコンセッション方式の導入だろう。コンセッションは、施設の所有権は公共部門に残したまま、施設の経営権を民間事業者に授与する特許経営方式のことである。両氏は以下の3つの点で、このコンセッション方式の導入には大きなメリットがあることを主張している。

一つ目は、コンセッションが民間企業に成長機会を与えるという点で、成長戦略になること。二つ目は、公務員にはない、民間企業の柔軟な視点がその運営に加わるということ。そして三つめは、コンセッションによって国や地方公共団体に財政資金が入ってくるので、財政再建にも寄与するということである。さらに両氏は、水道事業にコンセッション方式を導入することで、老朽化した設備の更新が進むことが期待されるとしている。

これについて、すでに中国では、公共事業などの財源獲得手段としてPPP(Public-Private Partnership)方式が盛んにおこなわれてきた。これは公共部門と民間部門が行う連携事業を指す広い概念で、上記のコンセッションのほか、建設・資金調達を民間が担って完成後は所有権を公共セクターに移転する「BTO(Built Transfer Operate)方式」などがある。

現在の中国で最も広く採用されているのは、政府あるいは国有企業と民間資本が共同出資して新たに企業を設立し、その企業が政府から権利を授与されて、インフラなどの公共財や公共サービスの提供を行うというコンセッション方式の変形である。この中国独自のコンセッション方式は、水道事業においても導入されており、中国全土の上水道の17%以上、下水道の67%以上に民間企業が参入しているという試算もある(六辻、2018)。