竹中平蔵氏と中国・習近平政権、提唱する「経済政策」がこんなに似てきている

日中で共鳴する新自由主義の行方(3)
梶谷 懐 プロフィール

この記述に端なくも現れているように、事前的には規制を行わず、企業が新しい事業を行った後に事後的なチェックと承認を行う、というのは、まさに近年の中国政府が、社会にとって少なからぬインパクトを持つ新サービスを政府が認可する際のやり方である。

たとえば、代表的な社会信用スコアの一つであるセサミ・クレジットを提供するアリババ傘下のフィンテック企業、アントフィナンシャルの活動を詳しく解説した書物では、次のような指摘がなされている(いずれも、廉=辺=蘇=曹、2019)。

アントフィナンシャルの多くの業務は『先にやって、後で認可を得る』スタイルである。例えば、アリペイは2003年にリリースされたが、中央銀行が交付する正式な決済業務の許可証(ライセンス)は、2011年になるまで取得していなかった。中国の監督当局がフィンテック企業のイノベーションを一撃で壊滅させなかったのは、それらの革新的な業務が実体経済に与える価値を認めたからにほかならない。

(中略)中国の監督当局がイノベーションを容認してきた手法は、世界で採用されているレギュラトリー・サンドボックス方式に通ずるものがある。つまり、リスクを注視しつつ、イノベーションを容認するというやり方だ。

ここでいう「レギュラトリー・サンドボックス方式」とは、新たな産業のイノベーションを促進するために、ある都市で実験的に、その産業に関する事前的な法的規制やルール作りを行わないままに自由に新企業あるいはプロジェクトの開発を行い、成功したプロジェクトについては事後的なチェックを行う、という制度である。

アリババの創業者、ジャック・マー氏〔PHOTO〕Gettyimages
 

中国企業のイノベーションに詳しい伊藤亜聖は、「中国全体が、ある意味で巨大な「規制のサンドボックス」となり、ベンチャーのゆりかごになりつつある」と指摘している(伊藤、2018)。やや異なる文脈においてだが、中国のデジタル経済の動向に詳しい澤田翔は、中国社会は野蛮なニューカマーがやや無茶なビジネスを試みても、大きな問題が起きないように制御された「安全な公園」を実現するのが巧みであり、そのことが近年のイノベーションの活発化につながっていると指摘している(澤田、2020)。

このレギュラトリー・サンドボックス制度は、近年先進国の間で、ドローンや自動走行などの革新的技術・サービスを事業化する目的で盛んに採用されており、注目を浴びている。日本でも、イノベーションを生み出す環境を整備する政策として、従来の国家戦略特区法や構造改革特区法を改正する形で、2018年度から限定的な導入が始まっている。スーパーシティ構想は、このレギュラトリー・サンドボックス制度を地域を指定してより全面的に導入しようというものだ。