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竹中平蔵氏と中国・習近平政権、提唱する「経済政策」がこんなに似てきている

日中で共鳴する新自由主義の行方(3)

あの竹中平蔵氏が、中国で大いに人気を集めているらしい。中国の人々はいったい竹中氏の何に惹かれ、彼から何を得ようとしているのか。神戸大学・梶谷懐教授による全3回のレポート。最終回となる今回は、竹中氏が提唱する経済政策と、習近平政権が目指す経済体制(「シーノミクス」と呼ばれる)に見られる類似、そして、日中で共振する「新自由主義」の動きについて解説する。

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スーパーシティ構想と「シーノミクス」

連載第1回の冒頭で触れた日本のスーパーシティ構想に関する批判としては、すでに紹介したように、中国のような政府に個人情報を管理された監視社会化が進む、というものがある。ただ、これは同構想への批判としてはやや的を外している。

むしろ「監視社会化」の問題についてはより普遍的な課題として、デジタル化されたさまざまな個人情報の扱いについて法規制を含めたルールを整備することで対応すべきである。むしろ問題は、その際の「ルール作り」がどのようになされるか、という点にあるのだ。

その意味で、スーパーシティ構想についてより重要なのは、同構想が市場そしてそのプレーヤーたる企業と政府との関係について、従来のように政府がルールを作って企業がそれを守る、という前提を根本から変えようとしていることにある。

スーパーシティ構想が、市場における「政府の役割」を根本的に変えようとしていることは、前述の原英史氏との共著『日本の宿題』の記述のはしばしに伺える(竹中=原、2020)。

例えば、同書の中で繰り返し語られるのが「事前的な規制から事後的チェックを行う政府への転換が重要だ」という姿勢だ。すなわち、前者は、行政が法令に基づいて事前に様々な規制を設け、産業界を支配・指導していくスタイルであり、何についても役所のお伺いを立てなければならないため新陳代謝が進まない。それに対して、事後的チェックは市場や競争を重視し、市場への自由な参入を認めると同時に、競争に敗れた企業が退出する際のルールをきちんと作ることだという(竹中=原、2020)。

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コロナ後の日本に対する緊急提言として出版された『ポストコロナの「日本改造計画」 デジタル資本主義で強者となるビジョン』にも、次のようなより明確な記述がある(竹中2020、第4章)。

アメリカの場合、比較的規制が緩いので、ある程度はアイディアを試すことができます。中国の場合、共産党政府が強いので、その命令によって、時には法律も個人情報をも超越して試すことができます。これに対して日本の場合、現実の都市で普通に試そうとしても、様々な制約(法規制など―筆者注)があって難しい。

(中略)そこで、スーパーシティ構想です。「様々な法律で規制されているけれど、住民の合意があるなら、制約を取り払いましょう」という考え方です。住民の合意を得て、現実の都市で新しいアイディアを実践するのです。