「あなたはすごく正直な人です」

映画の中で、「俺のことを利用していいよ。利用されるっていうのは、役に立ってるってことだから」という時戸のセリフが印象的だったので、多部さんに、「人の役に立ちたいと思うことは?」と聞くと、これまた少し恥ずかしそうな顔で、「それが……、こんなことを言ったら、薄情だと思われるかもしれないですけど……ないです」と言う。

「そういう献身的な気持ちとか、私はきっと持っていないんです。だからこそ、今のこういう状況で社会活動をしている方々を、すごいなって尊敬します。私は、人のために生きようと思ったことはないですし、誰かの役に立ちたいとか、そういう殊勝な考えは全然ないかもしれません(笑)。
もちろん、自然にやった行為に『あれ、本当に助かった、ありがとう』と言われたら嬉しいです。でも、『こうしたらみんなの役に立つんじゃない?』って思いながらやったことは一つもない。やりたいとも思っていないんです」

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そこから、彼女は大学の時に必修だった「キリスト教学」の授業がとても苦手だった話をしてくれた。
「レポートが多かったのですが、ある時、『先生の言っていることがわかりません』と、自分がその授業の内容になぜついていけないのか、なぜ興味が湧かないのかをつらつらと、レポート用紙の表と裏にびっしり書いて、『だから私には響きませんでした!』というような言葉でまとめて、提出したことがありました。そうしたら、レポートが返却されたときの先生からのコメントが、『あなたはすごく正直な人です』でした(笑)。でも、ちゃんと単位はもらえたので、今になって思えば、いい先生だったと思います」

撮影/山本倫子