大切な人を失うということ

両親の死をきっかけにタワーマンションに引っ越すことから物語は始まる。タワマンでの生活の中で、直実はもう一つかけがえのない命を失う。この映画のテーマの一つは、「喪失感からくる精神の浮遊感」にあるような気がするが、多部さん自身は、何か大切なものを失った時、どんな風に気持ちを整えているのだろう。

「今のところ、 “喪失”を感じたことがないんです。喪失まではいかないけれど、些細なことで傷ついて、落ち込んだことは若い頃にはよくありました。ただ、歳を取れば取るほど、不満があってもすぐ大声で言えたりすることもあるじゃないですか。それってなんて言うんでしたっけ?あ、“図々しい”(笑)!自分ももうその領域に入っているので、今は、結構図々しくなれちゃっていますね。それってなぜなんですかね?」

撮影/山本倫子

最初、しっとりめの真面目なトーンで答えていたと思ったら、あっけらかんとした語り口になり、最後はこちらが質問されてしまった。多部さんの場合、声もとてもキレイなので、インタビューなのに、楽しいお喋りをしているような錯覚に陥ってしまう。その場にいた女性スタッフ数名で、女はなぜ歳を重ねると図々しくなるのか談義を少ししてから、多部さんは、自分の中でこう結論づけたようだった。

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「若い頃って、どうしても自意識が強くなりがちなんですよね。私も仕事を始めたばかりの頃は、例えば撮影の時に『笑顔ください』って言われても、内心『絶対笑うもんか』って頑なになっていたことがありました(笑)。でも、年齢を重ねるといろんなことに開き直れるんです。自分が“今なぜ笑わないといけないのか”みたいな面倒くさいことを考えるのではなくて、仕事だからやる、と割り切れるようになる。それは、生きる上でプラスの作用をくれると私は思います」