武蔵小杉の「浸水した高級タワマン」を、売るに売れない30代男性の苦悩

購入時の価格で売るのはもうムリそう…
榊 淳司 プロフィール

次に、例えば35年という返済期間中に夫婦のどちらもがマンション購入時と同等かそれ以上の収入を確保し続けなければならない。そういう条件を満たして、やっとローンが完済できる。

この男性の場合、あの台風で被災する前だったら売却によってペアローンがきれいに完済できた上に、夫婦それぞれが少しくらいは手元に資金を残せたようだ。しかし、今となってはローンを完済できるかどうかも怪しくなっている。

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こういう問題に、うまい答えは見つからない。

その昔、ダイエーという巨大な流通チェーンを築いた中内功という方は、莫大な借金をしながら店舗を増やしていった。誰かに借金のことを指摘されると「成長はすべてを癒す」と答えたそうだ。借り入れが危険なレベルにまで増えても、企業そのものが成長していれば何とかなる、ということだろう。

これを個人のマンション購入に当てはめると「値上がりはすべてを癒す」ということになりそうだ。

この男性のケースも、ペアローンで購入したタワマンが値上がりを続けていれば、離婚協議になってもさほど悩まずに済んだかもしれない。

しかし、マンション市場が永遠に値上がり基調を続けるわけがない。中内氏のダイエーも、成長が止まったことで経営が傾いた。