武蔵小杉の「浸水した高級タワマン」を、売るに売れない30代男性の苦悩

購入時の価格で売るのはもうムリそう…
榊 淳司 プロフィール

不運なことに、その被災したタワマンには双子の兄弟のような物件が隣地にそびえたっている。同じ売主、同規模、同時期の竣工、名前も前半分は同じでサブネームだけが違っている。あの台風直後に「武蔵小杉のタワマンで汚水逆流」という情報がネット上を駆け巡った時、当初はその双子タワーの方だという誤情報になっていた。

つまり、男性が売却しようとしているタワマンには双子の兄弟が隣に立っていて、そこはなぜか台風の被害がほとんどなかったのだ。

ということは、同じ条件で中古タワマンを探している人は、まずその被害がなかった方の購入を検討する。被災した男性が離婚協議中の奥さんと共同所有するタワマンは、買い手側からすると「安ければ考えてもいい」という位置づけになるのが普通だろう。

現に、過去1年で被害のなかった方は10件の成約事例がある。しかも、8月以降にやっと3件成約した被災物件よりも5%から10%ほど成約額がお高めである。

そのことを説明すると、男性の表情がさらに暗く翳っていった。

 

ローンの組み方を間違えた

台風は避けられなかった。しかし、ペアローンは賢明な判断をしていれば避けられた選択である。

ペアローンとは、夫婦共同でマンションを購入する場合の住宅ローンの借り方である。それぞれの資産の持ち分に合わせた金額を借り入れて、それぞれの債務として返済していく仕組みになっている。

これは考え方によっては非常にリスキーな仕組みだ。

まず、新たに結婚する3組に1組はいずれ離婚する時代である。この男性のようにペアローンを組んだ状態で婚姻関係を解消しようとすると、売却額などで揉める。何といっても売主側の二人が同意しないと売買そのものが成立しない。