推しを考えることは「自分との対話」

ここで私は、自分には「つらい時に駆けこめる、聖域のような場」が必要なんだな、と分析した。そしてその後も、「ハイキュー」「ワールドトリガー」「ヒプマイ」「魔法使いの約束」……と聖域はどんどん増えていった。

でも、つらいときに聖域が必要とわかっていても、推しを意図的に作ることは不可能だ。素晴らしい作品や人が存在さえすればハマるというものでもない。受け手が欲している状況か否かも、非常に重要なのだ。それが私の場合、「弱っている時」なのだろう。弱った時に聖域を自ら作り出し、逃避して、好きな人や物しかない空間で薬のように元気をもらう。そういう流れを無意識に小学生の時に作り上げたのだと思う。

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なぜこんなにも推しについて考え続けることができるのか? と思われてしまうかもしれないけれど、推しを考えることは、偶像を通して行う「自分との対話」だ。結局は自分のことなのだ。だから考察は永遠に終わらない。ヒプマイ(※3)の独歩と一二三が好きな友人と、「なぜ私たちはこのキャラクターが好きで、彼らの関係性を悲観的にしか考察できないのか?」と語り合ったら、互いに過去の自分と向き合うことになってしまったこともある。

「ヒプノシスマイク」の観音坂独歩。伊弉冉一二三とは幼馴染。独歩は医療機器メーカーの営業で上司から日々嫌がらせを受けており極度の悲観主義者、一二三はホストなのに女性恐怖症、という設定/ヒプマイ公式サイトより
※3 キングレコード内レーベル「EVIL LINE RECORDS」が手掛ける男性声優18人による音楽原作キャラクターラッププロジェクト。男性中心の武力による戦争が終焉を迎え、女性が覇権を握るようになった「H歴」の世界が舞台。争いは武力ではなく、人の心に干渉する特殊なマイク「ヒプノシスマイク」にとって代わられた。男性は決められたいくつかの地区のみで生活し、やがて地区同士でこのマイクを使ったラップバトルによる領土争いが始まった……というのがあらすじ。

生きていると「しんどいことが多いなあ、増えてしまったなあ」と息苦しく感じることが多々ある。もちろんそのしんどいことを取り除いたり、傷を癒すこともとてもとても大切なことだ。でも、今すぐに自分の力じゃどうにもならないことだってたっくさんある。そんな時に、明日起きた時に楽しみがいくつかあるように、と楽しいことをいくつか持っておくと息がしやすくする。しんどさに飲み込まれないように、私は推しで対抗するのだ。