日本人唯一の「韓国野球専門家」として20年、栗山監督らとの出会いが私を変えた

「野球の国際化」のために仕事をする
室井 昌也 プロフィール

栗山さんは現地で精力的に取材。まだ発売2年目でいまほど認知されていなかった筆者の著書である選手名鑑を日本から持参し、選手について色々と尋ねてきた。

「シム・ジョンス(当時サムスン)はどこをケガしているんですか?」

その問いに本来なら、何が原因でどこを故障し、今後の回復方法まで伝えるべきだった。しかし当時の筆者は的確な回答を持ち合わせておらず、栗山さんの数々の質問に、知りうる限りのことしか答えられなかった。

韓国野球を取材する栗山さん(写真:ストライク・ゾーン)

数日後、テレビ朝日のスタッフから仕事依頼の電話が掛かってきた。栗山さんからの推薦だという。そして栗山さんが筆者について語っていたことが伝えられた。

「あの人は、わからないことはわからないというから信用してもいいと思う」

プロとして尋ねられたことに「わからない」と答えてしまうのは、未熟で情けないことだ。しかし栗山さんはそれを肯定的にとらえ、信用してくれたのだった。これは裏切れない。

それ以来、筆者は嘘をつかないのはもちろんのこと、自分がわからないことは徹底的に選手、首脳陣、関係者に尋ねていくことを決めた。

 

急速に進んだ野球の国際化

日本と韓国が準決勝で対戦した2006年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を皮切りに、2年後の北京オリンピック、そして両者が決勝戦で激突した2009年の第2回WBCと、日韓は熱戦を繰り返した。

その結果、キム・テギュン、イ・デホ、オ・スンファンら韓国のトップ選手が評価され、日本へと渡って行った。一方、韓国では代表チームの躍進をきっかけにプロ野球が若者に支持され、野球人気は最高潮となった。そしてそれらの現状を取材し発信する筆者の情報が、日本で求められる機会が増えていった。

時を同じくして、筆者のことを大きく成長させてくれた人がいる。2009年に投手として韓国球界入りした門倉健さん(現・中日2軍投手コーチ)だ。