筆者は主に韓国のプロ野球を取材し、日本の媒体や書籍に執筆。またテレビ、ラジオの野球中継、番組への資料協力や取材コーディネート、時に出演もしている。その他に球団や野球関連企業に向けた情報提供などが主な仕事内容だ。
この仕事を2002年から始めてから20年近く経過した。その間に野球界はトッププロの国際大会参加が当然となり、日韓両国では選手、球界関係者の顔を合わせての交流が盛んになっていった。
「筆者がこの仕事を始めた理由、それは『野球の国際化』に寄与するためだ」――。
そう言えたら、ビジネスパーソンに向けたグローバル時代を生き抜くコツをカッコよく書けただろう。しかし当時の筆者にそんな思いは微塵もなかった。
韓国プロ野球の取材を始めたきっかけ、それは「チアリーダー、延々と踊りまくっていてスゴっ!」、「マスコット、ブサイクだなぁ。あっ頭が取れた!?」、「ボロ負けなのに、応援団長盛り上げるねー」といった、観戦を通しての魅力をサブカルチャー的にただ楽しく伝えたいと思っていた。
ところが日本球界で活躍する人たちとの出会い、そして時代の変化が、筆者が担うべき役割を変えていった。

筆者の意識を変えた、栗山さんの言葉
2005年秋、この人のひと言が、筆者の仕事への向き合い方に大きな影響を与えた。栗山英樹さん(現・日本ハム監督)だ。
その年の11月に日本、韓国、台湾のチャンピオンチームと中国の代表チームが東京ドームに集い対戦する、「アジアシリーズ」が初開催を迎えた。その大会を前に日本から複数のメディアが、韓国の優勝チームを決める韓国シリーズに取材に訪れた。その中の1人が「報道ステーション」(テレビ朝日系)でスポーツキャスターを務めていた栗山さんだった。